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歌舞伎町トップホスト 子供時代からトップに君臨するまで語る

『歌舞伎町トップホストが教えるシャンパンタワー交渉術』(講談社・1404円)を上梓した歌舞伎町のホストクラブ『ロマンス』でトップに君臨する信長さん(35才)。接客に役に立つよう1か月に20~30冊もビジネス書などを読むという努力家の彼は、どんな人生を送ってきたのだろうか?

「お客様に“育ちが良さそう”とか、“苦労なんてしてこなかったでしょ”なんて、よく言われますが、子供の頃はすごく家が貧乏で、習い事をした経験もありません」

 それは、父親が事業に失敗し、3000万円以上の負債を抱えたためで、子供ながらに借金取りに怯える日々を過ごしていた。

「家族で外食をした経験もありません。給食費の引き落としができなくて、毎月、未納の書類を先生に手渡されるので、クラスメートには、よくからかわれましたね」

 母親はスナックで働き、家計を支えてくれたが、彼自身も中学生になると、清掃や引っ越しのアルバイトをして生活費を家に入れていたという。

「勉強はあまりしていなかったので、成績は中の下くらい。ある日、母親から、“100番以内に入ったら、5000円あげる”と言われ、俄然張り切って勉強を始めたんです。その結果、300人中50番以内に入って、見事、小遣いをゲット(笑い)」

 この経験で、いい点をとることに喜びを感じた彼は、3年生になる頃には、成績は常に10位以内をキープするようになっていた。

「高校に入学してからは、学費も教科書代も自分で払っていたので、アルバイトが忙しくて、成績はほぼ最下位。金はないし、家庭はすさんでるし、いつも逃げ出したいと思っていましたね。でも、コンビニでたまたま見かけた自己啓発本を立ち読みして、世の中には自分より大変な人がたくさんいると気づかされたんです」

 そして、彼は予備校講師という目標を掲げ、大学を受験するが失敗。浪人生活に突入する。とはいえ、お金がないので予備校には行けず、参考書での独学だった。

「参考書代や受験料を稼ぐためにピザ店でも働きました。デリバリー中、信号を待っている間に単語帳をチェックしてね。当時、ロン毛が流行っていたんですが、気合をいれるために頭は丸刈り。シャンプー代もなかったし、乾かす時間ももったいなかったんです。両親はこの頃すでに離婚していて、母はあまり家にいなかったので、弟や妹との会話もなくて、ひとり暮らしのような感覚でしたね。だから、食事も適当で、ひと袋30円ぐらいのラーメンを食べていました」

 浪人の末、早稲田大学教育学部に見事合学。在学中は塾講師や家庭教師をして学費などを稼いでいた。だが、それまでの反動か、卒業後は遊びまくり、300万円の借金を背負ってしまう。そうして、あとがなくなった彼が、このままではダメだ、という強い危機感を持って飛び込んだのが、ホストの世界だった。

「借金があったので、お金がたくさん稼げそうなホストがいいと思ったんです。それで、ホストになりたての頃は、友人との連絡も絶ち、テレビも見ず、遊びにも行かずに生活のすべてを仕事に捧げました」

 当時は店外での呼び込みもできる時代だったので、毎日18時間ひたすらキャッチを続けたり、強引に高額なお酒を入れてもらおうと頑張った時期もあったが、思うように稼ぎも増えず、長続きしなかった。そんな“修業時代”を経て、彼がたどり着いたのが、地道にお客さんとの信頼関係を築くということだった。

「ぼくは今でも、お客様の趣味、住んでいる場所からその日の服装、お酒の強さまで、会話していて気になったことはすべて書き留めています。ホストクラブって、居酒屋さんや家で飲むのとは違い、高いお金を払ってもらうので、その分、お客様に喜んでもらいたいんです。そのためには、相手のことをよく知らないと会話もできません。日常を忘れて、来てよかったと思ってもらうためには、いろんな情報をぼく自身が持っていないと、お客様に合わせた接客はできないと思うんです」

 300万円の借金に喘ぎ、ホストの世界に飛び込んで10年。ただでさえ派手な業界にあって、彼は浮足立つことはなかった。上辺のノリでその場をしのぐようなことはせず、客が喜んでくれるには何をすればいいのか考え続けた。その努力は着実に実を結び、今では年収3000万円超の年もあるという。相手の信頼を得ることに愚直なまでに正対した彼の姿は、友人関係や職場での人間関係を築く上でも大いに参考になる。

※女性セブン2014年9月11日号

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