ANAかJALにスカイマークを買い取ってもらうという選択肢も考えられるが、それは難しいだろう。日本はスカイマークなどの参入によってようやく航空業界に競争原理を導入できたという経緯がある上、ANAは経営不振が続いたAIRDO(エアドゥ)と当初はエアアジアとの共同出資で設立したバニラ・エア(旧エアアジア・ジャパン)を抱えており、経営再建を果たして間もないJALにも余力がないからだ。

 一方、エアバス側にはスカイマークが発注したA380を是が非でも売りたいという経営的な事情がある。その能力を有する世界でも数少ない航空会社の一つが、エアアジアなのだ。

 エアアジアは2011年にANAと合弁会社エアアジア・ジャパンを設立して日本の国内線に参入したが、サービス品質などで対立し、2013年に提携を解消した。その後、楽天などの出資を受けて新たに日本法人を設け、来年夏に再び国内線に参入することを決定している。

 そのエアアジアがスカイマークを買収すれば、日本以外でもA380を使える路線はたくさんあるし、スカイマークが豊富に持っている「ドル箱」の羽田発着枠(現在は36枠)を手に入れることもできる。成田空港内のスカイマーク事務所もそのまま使える。メリットはすこぶる多い。

 エアアジア本社のトニー・フェルナンデスCEO(最高経営責任者)が全面否定したのは株価が急上昇するのを牽制する意味があったのかもしれないが、航空業界に参入すると決めた楽天の三木谷浩史会長兼社長の頭の中には当然、この「棚ぼた」ディールが埋め込まれているはずだ。

 一方、このまま700億円超という総資産に匹敵する違約金を払わされることになったら、スカイマークは倒産するしかない。そういう状況になれば、すでにエアバスに支払ってある約260億円の前払い金が生きてくるので、うまみのある買収になるだろう。エアアジア側にとって失うものはほとんどないので、まだまだ“新たな展開”もあり得る、と私は見ている。

※週刊ポスト2014年9月19・26日号

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