国内

「国家戦略特区」福岡市で雇用規制の“タブー”が破られる

“岩盤規制打破”に向けた息吹が地方から上がりつつある。今回スポットをあてる福岡には、大人気ゲーム「妖怪ウォッチ」を生み出したレベルファイブをはじめ、話題の企業が集まりつつある。目指すは「日本のシリコンバレー」。改革の立役者たちを政策工房社長・原英史氏が訪ねた。

 * * *
 福岡市が目指すのは、「シアトルのようなベンチャー企業の集積地」だ。先月号でも触れたとおり、我が国では新規創業が他国と比べて非常に少ない(英米などは10%台なのに対し、5%に満たない)。

 しかし、福岡市はその中では特に開業率が高く、ベンチャー企業の多い街だ。これをさらに思い切り拡大していこうという構想である。8月初旬、筆者は福岡市を訪れ、市役所や、民間企業・団体などを回ってみた。

 行く先々で「新たなチャレンジをしよう」という勢いと大きな可能性を改めて感じることができた。
 
 まず市役所で応対してくれたのは、国家戦略特区を担当する特区部長に7月に着任したばかりの袴着賢治氏(37歳)。6月までは財務省の官僚だったが、福岡市の公募に応じて、転職してきた人物だ。

 中央官庁の官僚が期間限定で自治体に出向することはよくあるが、こうした転職のケースはほとんどない。こんな人物がいること自体、ここ福岡市で、国全体にとって重要な動きが起きていることを示しているといってもよい。袴着氏が現在力を注いでいる案件のひとつが、「雇用労働相談センター」の立ち上げだ。
 
 以前の連載(SAPIO7月号)でも紹介したが、我が国の雇用規制の抱える大きな問題のひとつが、解雇ルールが不明確であること。一見、従業員を保護しているように思えるが、どのような条件で解雇が認められるのかが不明確なので、企業は正社員雇用に二の足を踏まざるを得ない。
 
 特に創業間もないベンチャー企業にとっては、これは人材確保上の大きな制約になってしまう。
 
 福岡市などからの問題提起を受け、政府は今年4月に「雇用指針(ガイドライン)」を策定・公表した。ガイドラインでは、伝統的な終身雇用企業と外資企業・ベンチャー企業などを区別して、それぞれに適用されるルールを明確にしている。

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