ビジネス

急激な円安進行で輸入品値上げラッシュ 家計に大きな負担増

 急激に円安が進行し、9月19日には1ドル=109円台に突入。6年ぶりとなる円安水準となっている。円安になれば輸出企業の業績が上がり日本経済にとっては歓迎すべきものと考えがちだが、いいことばかりではない。円安は輸入品の値上がりに直結する。

 日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏は「安倍政権下の2年弱で、円相場はドルに対して2割強下落した。つまり輸入品価格が20数%上昇したことを意味する」と指摘する。

 燃料をほぼ100%輸入に頼る電気料金は、東京電力の平均モデルで政権発足時(2012年12月)は7427円だったが、今年7月には8541円まで上昇。

 食料品の値上げラッシュは幅広く続いている。「UCCホールディングス」は9月1日からインスタントコーヒーなど家庭向け7品目を平均40%値上げ。乳製品も「雪印メグミルク」はチーズ製品を価格は据え置いたまま減量する実質値上げを行なっている。

 衣料品も例外ではない。海外生産コストの上昇などを理由に、ユニクロを展開する「ファーストリテイリング」は、全商品の5%前後の値上げに踏み切った。

 数%というと大したことないと思われるかもしれないが、積もり積もって生活には大きなダメージとなっている。ファイナンシャル・プランナーの中村宏氏の指摘。

「円安や増税の影響を受けた物価高により、安倍政権発足当時と比べて可処分所得のざっと3%ほど負担が増えた計算になります。年収500万円のサラリーマン世帯なら、年間10万~12万円程度。さらに社会保険料アップ、年少扶養控除廃止、復興増税、環境税などでおよそ15万円負担が増えている。トータルで年間約26万円、月々2万円強も生活費が圧迫されている」

 産業界でも、一部の輸出大企業以外では、原材料や部品を輸入する企業を中心に、輸入コスト増が企業収益を蝕んでいる。

「JXホールディングス」や「出光興産」など石油元売り各社の2014年3月期決算を見ると、円安による原油価格の上昇を受けて値上げしたため売上高は増えたが、価格上昇分をすべて転嫁できなかったことから軒並み「増収減益」となった。

 食品大手「ニチレイ」の決算(2014年3月期)を見ても、主力の加工食品事業は「円安による仕入れコスト上昇」を理由に、営業利益ベースで前期比43.6%のマイナスだった。

 輸入コストアップは日本の富を流出させている。その結果が莫大な貿易赤字だ。貿易収支の「輸入額」は2012年は70兆6886億円だったが、2013年は81兆2425億円となり、約11兆円の大幅増。その結果、貿易赤字は約11.5兆円と、過去最大を記録した。

※週刊ポスト2014年10月3日号

関連キーワード

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン