芸能

噂の通勤マンガ家「地下鉄も高速も東京が一番かっこいい」

「東京の地下鉄はかっこいい!」と語る座二郎氏

“通勤マンガ家”として漫画ファンだけでなく絵本や美術ファンからも注目を集めている座二郎氏が、通勤電車で漫画を描く会社員を主人公に、夢のような現実のような不思議な地下鉄の世界を描く漫画『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』(小学館)。毎日の通勤電車の中で描くこの漫画は、製作過程をSNSでアップし続け、口コミで人気が広がった。「東京の地下鉄が世界一かっこいい」という座二郎氏に、そんな地下鉄の魅力について聞いた。

――電車で漫画を描く上で心がけていることは?

座二郎:マナーには大変気を遣っています。僕は電車の中でいろんな創作をする人がすごく増えてほしいと思ってるんですよ。みんなそんなにね、電車の中でまとめサイトを見ている場合じゃないんですよ。まとめサイトを見てるぐらいなら、俳句のひとつも考えた方がいいと思うんですよ。

――なんでもいいから受け手側じゃなくて発信する側になれと。

座二郎:そうです、そうです。ウェブで連載している漫画のあとがきにも書きましたが、「人の作った情報を受けているだけでは何にも残らないですから。なにか残さないと」ってことです。その方がモテますよ。

――地下鉄で漫画を描きながら思うことがあるんですか?

座二郎:マナーとして気をつけているのは、電車内に消しゴムのかすをまき散らさないようにとか、三角定規の先が急に人にぶつかったりしないようにとか…。なんで気にしているかというと、もっと電車の中で漫画を描く人が増えてほしいと思ってるからなんです。

――ライバルが増えてしまったら困るとは思わないんですか?

座二郎:みんながやったら、もっと楽しいんじゃないかなって思います。だって、もしマネする人が増えたとしても、僕は間違いなく第一人者になれますから。みんな、もっとやるべきです。小説だって書けると思うし、毎日書いたら結構たまると思うんだけど…。もともと一時期バンドをやっていて、電車の中でどれだけ曲を作れるか2週間くらいやってみたんですけど、iPadがあれば結構できるんですよね。漫画にも描いたけど、みんなもっと通勤時間を見直して何か残そうよってことが言いたいんです。

――通勤時間を見直して、というのがサラリーマン的でいいですね。作品を通して伝えたいことってなにかありますか?

座二郎:実はすごく言いたいことがあります。みんな、東京という街をばかにしていませんか? ニューヨークとかパリの方がかっこいいと思ってませんか?ってことです。本当は、東京の地下鉄がいちばんかっこいいんです。そこをちゃんと冷静な目で見られていますか?と言いたいんですよ。東京の地下鉄って世界的に見るとすごいんですよ。外国の人で、東京の地下鉄を見て腰を抜かしたって人はいっぱいいるんですから。

――どういうところでしょうか?

座二郎:システムとしてあれほど完成されている国はないですよ。まず時間通りなのがすごい。標識だってものすごく丁寧に作られている。ニューヨークの地下鉄なんかを歩いていると、上から水が漏って水浸しになっていたりするけど、日本の地下鉄はビニールがかぶせてあって、ここに注意してくださいって。ヘタしたら水が漏れているくらいで駅員さんが案内してくれる。外国では考えられないですよ。サービスもすごいし、やっぱり非常に高度に完成されたシステムだからこそ、なんだか“奥行き”があるように思えてくる。本当はもっと秘密があるんじゃないか?という空気感を漫画の中でも少し描いています。

 あとは、みんなが嫌う首都高なんかも、例えば「日本橋の上に首都高が架かっているのは醜いからやめろ」と言う人がいるけど、僕は完全に間違っていると思っていて。確かに首都高の下の暗いイメージはありますけど、ビルの間を飛んでいくように走る未来都市みたいな、あんなにすごいものが作れた首都って東京しかないんですよね。すごくないですか?

――私たちにとっては当たり前の風景になっていますよね。

座二郎:そうですよね。だから、漫画を描く上で、本当は東京をかっこいいという目で見てほしいのはすごくあります。パリやニューヨークに憧れている場合じゃないよって。そういう思いは強くありますね。たぶん、自分は外国生活がある程度あるからそう思うのかもしれないです。

――そういう発想いいですね。

座二郎:首都高の下に架かっている現在の日本橋だって、きっとできた時はこんなコンクリートの汚いのを作って、前は木の橋ですごく趣があった…みたいなことを言われていれたんじゃないかな。だから、川の上を覆う首都高を壊す方向らしいですけど、壊さない方がいいのになって僕は思います。首都高も地下鉄もかっこいい!って、気づいてほしいと思っています。

【座二郎(ざじろう)】
1974年8月8日生まれ。東京都出身。早稲田大学建築学科卒業。建築会社勤務。通勤電車の中で漫画を描く、サラリーマン漫画家。『ビッグコミックスペリオール』のウェブサイトで『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』(地下鉄の座二郎)不定期連載中。同作は第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門受賞。三児の父。

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン