ここにトリックがある。国の説明では、自動車メーカーが下請けから部品を購入する時は消費税を上乗せして代金を支払うことになっている。100万円分の部品を仕入れるのであれば、消費税(8%)を含めて108万円だ。
部品を組み立てて完成した自動車を50万円の付加価値を付けて国内で販売すると、「仕入値108万円+付加価値50万円+(50万円に対する)消費税4万円=162万円」が国内販売価格になる。
一方、海外で売る場合は消費税を上乗せできないので、海外販売価格は「150万円」になる。ここで「輸出戻し税」が出てくる。輸出販売した場合、自動車メーカーが仕入れ時点で支払ったとされる「消費税8万円」が国から還付されるのだ。
国や輸出企業は「部品の購入時に消費税分を上乗せして支払っているのだから、その分を取り戻すのは当然」と主張する。
しかし、実態は違う。消費税率が上げられても下請け企業は最終製品メーカーより立場が弱く、厳しい価格競争に晒されているため増税分を販売価格に転嫁できないケースが多い。実際、メーカーが支払うべき消費税は下請けが自腹で負担していることが多い。
また、メーカーが海外でも国内と同額の「162万円」で売ったとしても何の問題もないから、どのみち損などしない。それが実態なのに、消費税を納めていないメーカーに一括して巨額の還付金が支払われている。
※週刊ポスト2014年10月10日号