ビジネス

挑戦の気風生むマツダの現場 180か所以上測定して失敗大賞

分度器につけた紐を検査担当が持ち180か所以上を測定したが失敗

 2014年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤーと、ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤーにおいて、マツダ アクセラが世界のトップ3に選ばれた。さらに、独自技術『スカイアクティブテクノロジー』は、優れた環境・安全性能で世界的に高い評価を獲得している。クルマを単なる鉄の塊ではなく“命あるもの”と考え、これまでにないエモーショナルな造形を追い求める「魂動デザイン」など、その独創的なモノづくりによって、グローバル販売台数(2014年4-6月期)が対前年比6%増を記録。業績面でも好調なマツダのヒットを生み出す風土を支えるひとつのファクターが、挑戦する姿勢を評価し、失敗をほめ讃えるという「失敗大賞」だ。

 失敗大賞とは、惜しくも失敗はしてしまったけれど、マツダがモノづくりでこだわり続ける“独創的なチャレンジ”“あくなき挑戦”を讃えるために、2013年から年に2回実施されている表彰制度。挑戦した志の大きさなどを選考基準として、マネージャー賞、部長賞、工場長賞の3段階があり、最高賞である工場長賞が「失敗大賞」と呼ばれている。今回は、2013年下期の失敗大賞と部長賞の受賞者、およびそれぞれの技術を取材した。

「魂動デザインの陰影あるボディラインをより際立たせ、その美しさをさらに高める塗装が『ソウルレッドプレミアムメタリック』です。マツダが完成させたこの表情豊かで独創的な造形は、一方で私たち車両塗装検査係にとって、検査の難易度を上げることとなりました。まさに匠の技の領域となった最適な目視検査を、詳細に分析・数値化して、若手にも継承していくことに取り組んだことが、私たちの『失敗大賞』受賞に繋がったんです」そう説明するのは、第1車両製造部 車両検査課 車体塗装検査係リーダーの高岡康二さん。

 塗装検査はボディに蛍光灯の光を当てることで、塗装ゴミや傷を発見する。多くの曲線と深い陰影を持つ魂動デザインとソウルレッドの塗装では、蛍光灯が正しく当たる角度が非常に複雑で、検査担当者自身がたびたび移動したり、細かく視線の位置を変えたりしなければ正確な検査ができないのだという。

「分度器に目線位置を測る紐をつけ、ボディのあらゆる場所の測定を実施。1か所を4人がかり、ボンネットだけで2時間以上を要しました。また、検査を再現するテストピースも硬い素材と軟らかい素材の2種類を用意するなどして徹底。その結果、測定か所は180か所以上にまで増加してしまいました。

 最終的に、大変な苦労をしてまとめ上げた測定結果を一覧表にして上司に報告したのですが、“こんなに膨大で複雑な数値では、運用や教育ができない”という結論に。しかし、これだけの挑戦は『失敗大賞』に値する――という上司の推薦で、工場長賞=失敗大賞を受賞することができました」(高岡さん)

関連記事

トピックス

中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
スカイツリーが見える猿江恩賜公園は1932年開園。花見の名所として知られ、犬の散歩やウォーキングに訪れる周辺住民も多い(写真提供/イメージマート)
《中国の一部では夏の味覚の高級食材》夜の公園で遭遇したセミの幼虫を大量採取する人たち 条例違反だと伝えると「日本語わからない」「ここは公園、みんなの物」
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
『国宝』に出演する横浜流星(左)と吉沢亮
大ヒット映画『国宝』、劇中の濃密な描写は実在する? 隠し子、名跡継承、借金…もっと面白く楽しむための歌舞伎“元ネタ”事件簿
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン
山本アナ
「一石を投じたな…」参政党の“日本人ファースト”に対するTBS・山本恵里伽アナの発言はなぜ炎上したのか【フィフィ氏が指摘】
NEWSポストセブン
今年の夏ドラマは嵐のメンバーの主演作が揃っている
《嵐の夏がやってきた!》相葉雅紀、櫻井翔、松本潤の主演ドラマがスタート ラストスパートと言わんばかりに精力的に活動する嵐のメンバーたち、後輩との絡みも積極的に
女性セブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン