それともうひとつ。1978年に長野県松本市で国体があり、地方事情視察で山を歩かれ植物をご覧になったときのことです。当時、ある植物について長野出身の植物学者が陛下に説明をしました。

「この辺りがこの植物が生息する北限です。ここより北には生えません」

 すると、陛下が突然、怒りだしたのです。

「どうしてそんなことが言えるのか? 私は群馬県でその植物を見たことがある。よく調べたのか?」

 よく調べてもいないのにいい加減なことを言うなと仰りたかったのでしょう。陛下がお怒りになったのは、いずれもご自分に対し失礼があったからではありません。自然や科学に対する不十分な説明に立腹されたのです。陛下は常に科学者としての目や心をお持ちの方でした。  

【PROFILE】1935年東京生まれ。1958年、九州朝日放送入社。1961年にNET(現・テレビ朝日)に移籍し、1978年から宮内庁担当。1995年の退社後はフリーの皇室ジャーナリストとして活動。

※SAPIO2014年11月号

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