「この試験の目的は、新薬に効果があるかどうかと、副作用の出方を見る、それだけです。本来なら、新薬を使った患者グループと、使わなかった患者グループに分けて比較試験を行うべきです。薬を使った患者グループの治療成績のほうがよければ、有効と判断する根拠になる。ところが日本では、そうした試験は行わずに、厚生労働省は認可してしまうのです」
抗がん剤が一部にしか効かないことを認めるがん専門医は、近藤氏だけではない。問題は、「有効」の中身がこれほど頼りないものであることが、あまり世間に知られていないことだろう。近藤氏は抗がん剤の臨床試験を、患者に不利益を与えるだけの人体実験として強く批判している。
「治る見込みのない患者さんを実験台にするんですね。医者から1パーセントでも治る望みがあると言われれば、多くの患者さんは臨床試験を受けようと思うでしょう。しかしどんな抗がん剤にも、副作用はあります。ほとんどの患者さんにとって、苦しみを増やすだけですよ。患者さんには穏やかに余生を暮らす権利があるはずです。
臨床試験は、数多くの病院で行われています。抗がん剤を開発したい製薬メーカーと、製薬メーカーから研究費を獲得したい病院側の思惑が合致して、たくさんの患者さんが実験台にされています。医者から新しい薬を使いましょう、と言われたら注意してください」
抗がん剤が効くのは、一部のがん。これだけは覚えておきたい。