芸能

菅原文太さん CG映画に「映画ではない」と腹を立てていた

 11月28日に、肝不全で亡くなった菅原文太さん(享年81)だが、晩年は俳優仕事は激減し、山梨の自宅で農業に精を出す生活を送っていた。

 2001年の長男・加織さん(享年31)の死後は、特に仕事量が減っており、その後、10年間で、出演映画はわずか3本、テレビにもほとんど出なくなった。

「あの事故で文太さんの意識は大きく変わりました。人間は誰もがいつか死に、土に返る。このことに改めて気づかされて、“俳優よりも土を触る仕事がしたい”って、農業に興味を持ち始めたんです。土に触れることで、天国の加織さんと会話していたのかもしれませんね」(文太さんの知人)

 こうして2009年には、山梨県北杜市に移り住んで農業に転身していたが、彼が役者業から離れた理由は、他にもあった。若手俳優たちの職業意識の低さに、嫌気がさしていたのだ。

「2000年代に入り、アイドルばかりが映画に出演するようになって、しかも“CMがあるんで…”といって、髪の毛も切らないような人間が増えてきましてね。こういう風潮が、文太さんには許せなかったんです。役柄上必要なら坊主にもするし、眉毛を全部剃り落とすことだってある。そんなことは文太さんからすると当たり前なわけです。“役者をなめやがって”と、よく愚痴っていましたよ(苦笑い)。“日本映画界はもう終わりだ”ってね」(映画関係者)

 また、文太さんからすると、ロケもしないでCGで背景を合成するような、最近のデジタル映画の隆盛ぶりにも腹を立てており、「あんなものは同じ映画だと思っていない」と、インタビューなど公の場で、幾度となく苦言を呈してきた。

 息子の死、そして古き良き映画文化が衰退して行く現状に、文太さんの心が、俳優という仕事から離れてしまったのだった。

 山梨に移り住んでからは、農業関連のNPO法人を立ち上げ、3.11東日本大震災の後は、脱原発や反戦争を訴える政治支援団体「いのちの党」を立ち上げながら、妻とふたり、地域に密着しながら、土に触れて生きてきた文太さん。

 このたび、彼の逝去を受けて、妻はこんなコメントを発表した。

「『落花は枝に還らず』と申しますが、小さな種を蒔いて去りました。1つは、先進諸国に比べて格段に生産量の少ない無農薬有機農業を広めること。もう1粒の種は、日本が再び戦争をしないという願いが立ち枯れ、荒野に戻ってしまわないよう、共に声を上げることでした。すでに祖霊の1人となった今も、生者とともにあって、これらを願い続けているだろうと思います」

 文太さんは、最後まで“仁義”ある生き方を貫いた──。

※女性セブン2014年12月18日号

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン