ビジネス

築地銀だこ社長 「被災者の力になりたい」の思いで上場決意

 いまやハイボール片手にたこ焼きをつまむのが、サラリーマンの日常風景となっている。「築地銀だこ」を展開するホットランドは、世界に店舗進出し、9月には東証マザーズに上場を果たすなど目下、成長を続けている。同社の佐瀬守男社長(52)に、上場を決意するきっかけとなった東日本大震災と被災地支援について、ノンフィクションライターの高川武将氏が聞いた。(文中敬称略)

 * * *
「僕、本当に商売が好きなんですよ。暇が嫌いで、机の前に10分も座っていられない。常に動いていないと生きていられないんです」

 たこ焼きの築地銀だこを軸とした「和のファストフード」を国内外で展開するホットランドの社長、佐瀬守男は、にこやかにそう言った。

 同社は1988年、25歳の佐瀬が中古車を売って得た40万円を元手に、出身地の群馬県桐生市で開いた焼きそば店に始まる。1997年に「銀だこ」が大ブレイクし、今や売り上げ200億円を超す外食企業に成長させた。そんな叩き上げ社長のイメージとは裏腹に、物腰は柔らかく、口調は終始穏やかである。

「考えることが好きで、ずっと考えてますね。ワクワクするアイディアが浮かぶと楽しくなって、行動しちゃう。まあ、後先を考えないところもありますけどね(苦笑)」

 動きながら考える人である。同社は9月30日、株式上場を果たしたが、その決断の経緯がまさにそうだった。発端は2011年3月11日の東日本大震災である。

 宮城県石巻市出身の一人の社員の父親が波にのみこまれ、母親と妹が避難所生活を余儀なくされた。「温かいものを食べさせてあげたい」という社員の思いを聞き、佐瀬は炊き出しに向かう。同社では2008年から全国の児童養護施設や介護施設などを車で回り、たこ焼きをふるまうボランティア活動をしている。その「銀だこカー」で石巻に入った佐瀬は、あまりの惨状に息をのんだ。

「一過性の支援で終わらせてはいけない」と、ホットランドが中心になり、取引先企業や友人らの共同出資で現地に合弁会社を設立。「被災者に笑顔を作りたい。100日で100人の雇用を生み出し、税金を石巻に納める」ことを目的に、7月末には1000坪の土地にトレーラーハウス型店舗が10店軒を連ねる石巻ホット横丁をオープンさせた。

 当初は賑わいを見せ、「生きていてよかった」と喜び合う被災者たちの姿も見られたが、厳しい冬の訪れと共に客足は激減した。危機的状況に佐瀬は、ホット横丁の完全子会社化を思い立つ。だが、本社は創業時からの桐生市にあり、税金は石巻市に落ちない。ならばと、本社そのものを石巻市に移転させてしまう(今年1月にホット横丁の閉店と共に東京に再移転)。そのとき、株式上場を決意したという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

タレントでミュージシャンの桑野信義(HPより)
《体重58キロに激減も…》桑野信義が大腸がん乗り越え、スリムな“イケオジ”に変貌 本人が明かしていた現在の生活
NEWSポストセブン
総裁選の”大本命”と呼び声高い小泉進次郎氏(44)
《“坊ちゃん刈り”写真も》小泉進次郎と20年以上の親交、地元・横須賀の理容店店主が語った総裁選出馬への本音「周りのおだてすぎもよくない」「進ちゃんは総理にはまだ若い」
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
《2人の信者が入水自殺》「こいつも死んでました」「やばいな、宇宙の名場面!」占い師・濱田淑恵被告(63)と信者たちが笑いはしゃぐ“衝撃音声”【共謀した女性信者2人の公判】
NEWSポストセブン
雅子さまの定番コーデをチェック(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《“定番コーデ”をチェック》雅子さまと紀子さまのファッションはどこが違うのか? 帽子やジャケット、色選びにみるおふたりの“こだわり”
NEWSポストセブン
ハロウィーンの2024年10月31日、封鎖された東京・歌舞伎町の広場(時事通信フォト)
《閉鎖しても何も解決しない》本家のトー横が縮小する中、全国各地に”ミニトー横”が出現 「追い出しても集まる」が繰り返されている現実 
NEWSポストセブン
「慰霊の旅」で長崎県を訪問された天皇ご一家(2025年9月、長崎県。撮影/JMPA) 
《「慰霊の旅」を締めくくる》天皇皇后両陛下と愛子さま、長崎をご訪問 愛子さまに引き継がれていく、両陛下の平和への思い 
女性セブン
おぎやはぎ・矢作兼と石橋貴明(インスタグラムより)
《7キロくらい痩せた》石橋貴明の“病状”を明かした「おぎやはぎ」矢作兼の意図、後輩芸人が気を揉む恒例「誕生日会」開催
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
「一体何があったんだ…」米倉涼子、相次ぐイベント出演“ドタキャン”に業界関係者が困惑
NEWSポストセブン
エドワード王子夫妻を出迎えられた天皇皇后両陛下(2025年9月19日、写真/AFLO)
《エドワード王子夫妻をお出迎え》皇后雅子さまが「白」で天皇陛下とリンクコーデ 異素材を組み合わせて“メリハリ”を演出
NEWSポストセブン
「LUNA SEA」のドラマー・真矢、妻の元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《大腸がんと脳腫瘍公表》「痩せた…」「顔認証でスマホを開くのも大変みたい」LUNA SEA真矢の実兄が明かした“病状”と元モー娘。妻・石黒彩からの“気丈な言葉”
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン