製作したのは都内の教育系出版社で、監修は泌尿器科医の岩室紳也氏。

 全国の自治体などがこの冊子を採用しているといい、例えば山梨県ではこの4年間、夏休み前の高校1年生全員に配布した。

 専門家はどう考えるか。若者の性感染症に詳しい日本家族計画協会クリニック所長・北村邦夫医師の話。

「ちょっとくだけすぎの文章だと思いますが、若者同士のメールという体裁で解説するのは悪くない。私の診る子たちでも、こういうメールを書きそうな子がたくさんいます」

 一方、高校教諭として20年近く性教育を行なってきた私立高校講師の丸山慶喜氏はこんな見方をする。

「高校生をバカにしているのではないでしょうか。彼らは大人が意図をもってわざわざ若者っぽい言葉遣いで作ったものだということを敏感に察知します。性感染症というセンシティブな話題だからといって、親しみを持たせようという意図がミエミエです。子供はすぐ見抜いて敬遠してしまいます」

 小冊子を選定した行政はどう考えているのか。

「若者にも手に取って読んでもらいやすいと考えて採用した。現在までに苦情などはとくにない」(山梨県福祉保健部健康増進課)

 監修者の岩室氏が冊子の意図を説明する。

「医師として性感染症についてコミュニケーションをとっている若者ほど感染率が低いと感じています。知識を伝えるだけでなく、若者たちの軽い会話のなかで性感染症の話題を取り上げてもらいたいので、こういう形にしました」

※週刊ポスト2014年12月19日号

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