「仕事との両立ができずに、愛犬のポンのことは今、実家で面倒を見てもらっています」と語るのは、営業職の木戸さん(29歳・仮名)。小型室内犬でやんちゃで甘ったれなポンちゃんは、子犬の間は特に問題なく、元気に部屋中を飛び回っていた。しかし大きくなってくるにつれて、遊んでいる途中で急に痛そうに鳴くようになった。
「小型犬に多いようなのですが、先天的に関節にトラブルがあったようで、ちょくちょく病院に連れて行かないといけなくなったんです。でも1人暮らしで代わりに獣医さんへ連れて行ってくれる人はいないし、仕事は休めないし、ずっと入院させるほど酷いわけじゃないし……ポンはかわいくて仕方なかったけど、どうしていいかわからなくなったりしましたね。
ペットを飼っていた同僚に勧められて、ポンを飼い始めた時にペット保険には加入していたんで、お金の心配や負担はそれほど大きくはありません。だけど部屋に1人きりにして仕事に出かけて、夜に家へ帰ると痛そうに鳴いていたのを見た時は、かわいそうでたまらなかったです」(木戸さん)
そんなタイミングで木戸さんは母親からの電話を受け、自分の近況より先にその話をすると、すぐに「うちへ連れてらっしゃい」と言ってくれたのだという。
「今の自宅から実家までは電車で1時間くらいなので、以前も出張の時に、ポンを預かってもらっていたんです。今は兄弟も独立して両親が二人だけで暮らしているので、その時も『たまに預かるくらいならともかく、ずっと飼うのは大変。責任を持って飼いなさいね』なんて、小学生相手みたいなことを言っていたので、意外でした。でも考えたら、そうした方が、ポンのためにもなるかな……って。
通っていた動物病院の先生が、実家の近所の獣医さんも紹介してくれたので、その点でも安心できました。治療費や保険の手続きなどの面倒までかけるのはなんですから、月1くらいですけどポンに会いに行って、その時に治療費の精算をするようにしています。最近あまり頻繁には実家に帰ってなかったから、“これが狙いで、引き取ってくれたのか?”と思ったりしたのですが、ポンが嬉しそうに僕を迎えるのが気に入らないようで、近頃では両親揃って『もうポンは、お前の子じゃなくて、うちの子だからね!』と主張しています。まぁいずれにせよ、いい親孝行になっているかもしれませんね(笑い)」(木戸さん)
こうしたペットを含めて、家族全員が幸せに暮らせるようになるケースもあれば、残念ながら、悲しい別れを経験しなければならない時もある。今年の春、11年家族としてすごした飼い猫のトムくんを看取った実和さん(42歳・仮名)は、今なお「あれで良かったのか?」と自問自答するという。