国際情報

「イスラム国というのはテロリスト集団」とイラク人青年語る

 イラクのアルビルには、ベストセラー『がんばらない』著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が代表を務めるJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)のイラク側の拠点がある。世界各地の医療支援活動にたずさわる鎌田氏が、訪日したイラク人青年と語りあったイスラム国とイスラム教徒との違いについて解説する。

 * * *
 11月の半ば、一人のイラク人青年と日本で会った。ムスタファ・イマッドくん、20歳。バグダッド出身。

 8歳のときにイラク戦争を体験している。その際、アメリカのヘリコプターの攻撃を受け、足に大けがを負った。その手術は12回にもおよび、今も彼の脚にはほとんど筋肉がない。長期のリハビリでなんとか歩くことはできるようになったが、就学できなかったので、今、ようやく高校に通っている。将来は航空技術者になるのが夢だという。

 僕は彼に「かつてイラクではスンニ派とシーア派は仲良しで、男女が好きになれば結婚していた時代もあったのではないか」と質問した。

 ムスタファくんは答えた。

「スンニ派とシーア派は、イスラム教という大きな枠の中で仲良くしていました。僕自身はスンニ派ですが、僕の叔母はシーア派です」

 さらにムスタファくんは続ける。

「今対立しているのは、スンニ派という名前を掲げている民兵のイスラム国と、シーア派という名を掲げる民兵同士です。若者だけではなくイラク人全員が思っていることだけど、イスラム国というのはテロリストの集団であってイスラム教徒なんかではない。イスラム教は人に親切にすること、優しくすることを説いています。人を脅かしたり、国を乗っ取ったりすることは経典にありません」

 イラクの子どもたちに義足を送る“希望の足プロジェクト”が始まったことは過去にも書いたが、今年も12月1日から“2015年チョコ募金”がスタートした。

 今度もまた、イラクの白血病やがんの子どもたちがチョコの缶に“いのちの花”を描いてくれた。1缶に10枚のチョコレートが入り、4缶セット2000円。北海道の六花亭が原価で提供してくれ、今年は16万個用意している。

 このチョコの売り上げでイラクの子どもたち、シリアの難民、福島の子どもたちを助けていく。16万個を売り上げるのはとても大変で、多くの支援が必要な状況だが、クリスマスのプレゼント、香典返し、結婚式の引き出物などにも使ってくれる人が増えた。それでもやっぱり、最大の需要はバレンタインデーの義理チョコである。

 このチョコの応援で、イラクの若者たちがイスラム国に洗脳されないように、愛の手を差し伸べていくことが大事である。

 イスラム国の侵攻で疲れている人々が少しでも元気に新年が迎えられるといい。みなさんも、どうか応援して下さい。

●チョコ募金のお申し込みは、JIM-NET事務局、ホームページは http://jim-net.org/

※週刊ポスト2014年12月26日号

関連記事

トピックス

「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年12月3日、撮影/JMPA)
《曾祖父母へご報告》グレーのロングドレスで参拝された愛子さま クローバーリーフカラー&Aラインシルエットのジャケットでフェミニンさも
NEWSポストセブン
指示役として逮捕された村上迦楼羅容疑者
「腹を蹴れ」「指を折れ」闇バイト主犯格逮捕で明るみに…首都圏18連続強盗事件の“恐怖の犯行実態”〈一回で儲かる仕事 あります〉TikTokフォロワー5万人の“20代主犯格”も
NEWSポストセブン
3年ぶりに『紅白』に出場するKing & Prince
《ボーイズグループ群雄割拠時代が到来》キーワードは「オーディション」と「自由」 メンバー個人での活躍の場も拡大、“脱退組”にも注目
女性セブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《スクープ》“連立のキーマン”維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官が「秘書給与ピンハネ」で税金800万円還流疑惑、元秘書が証言
NEWSポストセブン
2018年、女優・木南晴夏と結婚した玉木宏
《ムキムキの腕で支える子育て》第2子誕生の玉木宏、妻・木南晴夏との休日で見せていた「全力パパ」の顔 ママチャリは自らチョイス
NEWSポストセブン
大分県選出衆院議員・岩屋毅前外相(68)
《土葬墓地建設問題》「外国人の排斥運動ではない」前外相・岩屋毅氏が明かす”政府への要望書”が出された背景、地元では「共生していかねば」vs.「土葬はとにかく嫌」で論争
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン