――ゲームやテレビなど、一般に勉強の妨げになるようなものが好きな場合はどうしたらよいでしょうか。
時田:どんなことであれ極めればものになると私は考えますが、反面、やめたい、あるいはやめさせたい場合は、強制することですね。「うちの子、ゲームばかりなんです」と嘆くお母さんがいますが、実際はゲームばかりではないんです。ご飯を食べてるし、合間にテレビを見たり、漫画を読んだりしてる子がほとんど。だからそうした悩みを持つお母さんには「朝から晩まで、徹底的にゲームをさせてください」と言います。好きなことでも、もしかしたら好きなことだからこそ、強制されると、人っていやになるんです。
自分でやめたい場合も、自分に強制して徹底的にやればやめられます。買い物がやめられない人は、徹底的に買い物をしていると、いつか飽きます。私は幼い頃、大変な偏食で、好物はカステラと梨でした。それを知った祖母が毎日出してくれたら、41日目に「もう食べられない!」と泣きました(笑)。祖母は良かれと思って出してくれたと思うのですが、人って、そればかりを強制されるといやになるんだなと学びました(笑)。
――家庭教師として生徒のご自宅に行かれることも多い先生ですが、できる子の家庭の特徴はありますか。
時田:そうですね。質問からはちょっとずれた回答になりますが、私は不登校や引きこもりの子も教えているんですね。「子供が引きこもりになりやすい家かどうか」は、入った瞬間にわかります。いわゆるモデルルームのようにピカピカで生活感のない家は、引きこもりにないやすい。こういう家庭の問題は目線が“外”を向いていることです。親御さんはめっちゃ喋る一方、子供はほとんど喋らない、というのも、こうした家庭によく見られる傾向です。
――引きこもりの子のいる家庭に、何かアドバイスはありますか。
時田:それぞれの家庭に個別の事情があると思いますので、総論では言えません。ここでは一つだけ、私の経験をお話しましょう。子どもが引きこもりになったある家庭では、お母さんに、雑誌1冊を机に置いてもらうところから始めました。このお母さんはとても綺麗好きで、机の上に物が置いてあるとダメな方だったんですね。「許せる範囲を増やしていきましょう」とお話しして、雑誌1冊から頑張ってもらいました。他の人の理念や理想論よりも、こうした小さな具体的なアドバイスが役に立つことがあります。
少しずつお母さんが変わると、子供も変わっていきました。受験勉強とは、単に受験テクニックを学べばいいものではなくて、生活の延長線上にあるものだと、私自身も気づかされました。
■時田啓光(ときた・ひろみつ)
株式会社合格舎代表取締役。下関出身、京都大学大学院卒業。日本プレゼンテーション協会認定講師。これまでに延べ1200名を指導し、偏差値35の生徒を東京大学合格に導く。東京・千葉・長野・広島などの全国の学校教育機関や各種団体で講演活動も行うなど、幅広く活動している