国内

与党の圧勝は対外関係にもプラス 外交の自由度高まると識者

 総選挙は予想通り与党圧勝で終わった。安倍晋三首相は長期政権への基盤を固め、2015年9月に迎える自民党総裁選での再選は確実だ。野党はといえば、民主党も維新の党も伸び悩んで政権交代どころか、ひところ夢見た2大政党制ははるか彼方に遠のいてしまった。

 世間には「1強多弱体制は健全ではない」と嘆く向きがある。私も自民党独裁がいいとは思っていないが、だからといって、ないものねだりをしても始まらない。ここは、むしろ本格的な政治主導の環境が整ったと前向きに評価したい。理想的でないとしても、真に政治主導を実現するにはこれくらいの与党圧勝が必要だったのだ。

 それには理由がある。新聞やテレビを眺めていると、政治は与党と野党のバトルで動いていると思いがちだが、実はそうではない。舞台裏で官僚が政治家をしのぐほどの権力を握っている。

 はっきり言えば「政策は官僚にお任せ、政治家は権力闘争に明け暮れる」のが少し前まで続いた政治の実態だった。それで平和と繁栄が実現するならいいが、残念ながら、もうそういう時代ではない。

 与党圧勝は対外関係にもプラスだ。日本にとって最大の脅威である中国は安倍政権の圧勝を苦虫を噛み潰して見ている。中国がいくら外から日本に圧力をかけても、国内で同調する勢力は弱まった。中国が期待するような政権批判は高まらない。逆に外交の自由度は高まるはずだ。

 野党とマスコミはどうなるか。野党はアベノミクスを批判するだけで「自分たちはこうする」という対案を説得力をもって示せなかった。野党再編は待ったなしだ。新しい野党の形を示せない限り、与党と官僚による、ややいびつな政治が続くことになる。

 マスコミは批判勢力としての役割が重くなる。それには理念先行ではなく現実に根ざした報道と論説、ポチではなくオオカミの記者が必要だ。いっそ雑誌や外国人記者に記者クラブを全面開放するところから始めてはどうか。

■文/長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年 新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年1月9日号

関連キーワード

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト