安倍晋三内閣が「第三の矢」(成長戦略)の切り札として進める国家戦略特区。今年8月、内閣府が行なった国家戦略特区の第二次提案募集に応じて、相当数の自治体・民間事業者から、既指定の6か所に勝るとも劣らない提案がなされた。政策工房社長の原英史氏は、その中から「田沢湖・玉川温泉を中核とした医療・農林ツーリズム特区」を提案した秋田県仙北市を訪れた。その時の発見をレポートする。
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仙北市の特区プランは、以下の3つの柱で構成される。
(1)外国人も含めた、温泉活用・湯治型の医療ツーリズム推進
(2)食のトータルプラン(食農林観連携)の推進
(3)医療・観光拠点開発のための公共施設・交通などの改革
この内容からは農林業、医療、観光の連携による地域の成長を目指すことが窺え、国に対しても、農業生産法人要件の緩和、国有林野の民間開放、外国医師の活用拡大などの岩盤規制の改革を求めている。
事業プランの完成度は高い。規制改革提案はすぐに、内閣府に設けられている国家戦略特区ワーキンググループにかけられ、実現に向けた協議がスタートした。提案の背景については、仙北市の門脇光浩市長にご登場願おう。
「仙北市には無限大の可能性があると思っています。景観、体験、温泉など多様な観光資源があり、年間600万人の観光客に来訪いただいています。ところが、これが残念ながら市民の所得、豊かさにつながっていません。
本来これだけの観光客の方々にお越しいただいているのですから、ここで作った食品を、わざわざ輸送コストをかけることなく食べていただけるわけです。『おいしかったよ』といって販売拡大につなげていただける可能性があります。そこで、食品産業を成長産業の基軸と位置づけて、企業誘致、クラスター(産業集積地)形成にも取り組んできました。秋田牛ブランドの拠点づくりなども進めています」
市長の意気込みに呼応するように、市役所だけでなく、新たにチャレンジしようとする事業者も集まってきている。