ビジネス

ある偶発的な出会いがキャリアに結び付いた実例を識者が紹介

 ネットは人と人の距離を飛躍的に縮めた。しかし計算された出会いばかりではつまらない。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が、昨年のクリスマスイブに起きた「奇跡」を紹介する。

 * * *
 最近、感動したことを共有しましょう。

 私、まさに中学校2年生で、中二病だった頃、1988年の10月5日に人生が変わりました。この日から、「大槻ケンヂのオールナイトニッポン(第一期)」が始まったのですが、これが超絶面白かったのですよね。

 オーケンこと大槻ケンヂの言動はキレッキレ。1時から3時までハイテンションで飛ばしまくり。「午前2時のシンデレラ」という公開テレホンセックスのコーナー、「ケンさんコーナー」というホモの人の目撃情報コーナーなど、今では放送が厳しいだろうなあというコーナーもいっぱい。毎日が放送事故寸前の日々でした。

 私はこれで、大槻ケンヂと筋肉少女帯の大ファンになったのでした。その頃、同じクラスの女子生徒に、筋肉少女帯のCDを貸したのです。まあ、当時は持っているCDを貸し合うことは珍しいことでもなく、普通のことであり。そのことすら忘れていました。今から約26年前の話です。

 時間はいきなり2014年のクリスマスイブに飛びます。突然、ある方からFacebookでメッセージをもらいました。約26年前のあの日にCDを貸した同じクラスの女子の、妹さんでした。あの時、貸したCDで大槻ケンヂのファンになったとか。今は、なんと、オーケンがステージで着る衣装を作っているのだそうです。先日のライブのバックステージで、私からCDを借りたエピソードをオーケンにしてくれたとか。

 いやはや、こんなことってあるものなのですね。私が偶然、オーケンのラジオを聴いて、ファンにならなかったら、あの日「聴いてみなよ」とクラス仲間にCDを貸さなかったら、実現しなかった縁ですね。

 まさに、40歳の、中年の、若き老害の昔話に過ぎませんが、私がラッキーだったことは「10代の頃にネットがなかったこと」「出て行く憧れの都会があったこと」「情報に飢えていたこと」だったと思います。テレビやラジオ、新聞、雑誌という、今、メディア関係者が言うレガシーメディアにしがみついていたと。かじりつくように、しゃぶりつくすように楽しんでいたと。特にラジオと雑誌には雑多な情報がてんこ盛りでした。偶発的な出会いがあったのですよね。

 若者を見下すような言い方で申し訳ないですが、いまはネットで何でも検索する時代になり、偶発的な出会いが減っているようで逆にかわいそうだと思います。もちろん、ヤフトピやニュースアプリが昔でいう雑誌やラジオの役割を果たしていて、そこで偶発的な出会いがあるとも言えますが。

 大学でキャリア教育の講師を始めて約5年。学生や若い社会人と接していると、あたかもプラモデルの設計図のように、人生に答を求める人、計画通りに進まないといけないと思っている人によく遭遇します。そのことを責めるつもりはまったくありません。むしろ、若い頃は先が不安ですし、人生に答を求めるものですから。

 ただ、キャリアは偶発的なことで形成されていくのもまた真理です。検索しても、人生の答は見つかりません。自分の人生を決めつけず、偶発的な出会いを大事にする、そのためにアンテナを敏感にしておく、柔軟な姿勢をとる。これもまた大事ですね。

 2015年が始まります。今年は、偶発的な出会いを大事にしてみませんか。私自身も、身の回りのことにいちいち反応できる感性と体力を大事にしていきたいと思います。今年もよろしくお願いします。

関連キーワード

関連記事

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左・共同通信)
《熊による本格的な人間領域への侵攻》「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ 
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン