国内

寺とは何か「教会でもモスクでもありません」と橋爪大三郎氏

 戦後、新宗教(一般的に幕末~明治以降、現在までに創設されたもの)が勢力を伸ばした背景には、既存の伝統仏教が人々の「救い」になりえなかったという指摘がある。江戸時代に定められた檀家制度を踏襲し、さらには寺院を世襲運営している日本仏教の現状は、世界から見ても特殊だ。改革の必要はないのか。社会学者の橋爪大三郎氏に聞いた。

 * * *
 現在の「葬式仏教」をやめて、本来の仏教を日本に復興するには、いまの仏教界をスクラップにする、リセットボタンを押さなければならないのでしょうか。

 世襲の寺院はつぶして、葬式もやらない。しかしこれでは、新しい仏教がかわりに生まれて来る保証がない。

 仏教寺院は現に、日本の葬儀の大部分を担っています。それなりに社会的サービスを果たしている。また貴重な文化財を多く保存してもいる。それを、有無を言わさずリセットするのは、非現実的です。ではどうすればいいのか。

 仏教再生の方向をみつけるためには、仏教の根本に戻る以外に、道は見えないと思います。そういう努力がまだまだ足りない。もっとアイデアを出し、議論することが必要です。

 たとえば最近、「寺を開こう」というスローガンを掲げ、活動している僧侶たちがいます。お寺を親しみやすい場所に変えようと、境内で各種のイベントを催すなどしたり、手さぐりで運動している。よいことです。

 ただ私は、その前に、「寺とはなにか」を突き詰めて考えてもらいたい。寺は教会でも、モスクでもありません。

 寺がなければいけないと、経典のどこにも書いてない。寺は仏教の本質と、関係ないのではないか。そこまでさかのぼらないと、人々の深いところに届く運動にならないと思います。

 仏教の本質に関係ないことに、価値を認めないようにすべきです。

 葬儀はやってもいいが、仏教の本質と関係ない。戒名は、ますます関係ないから、そのことをはっきりさせる。法を説く、という釈尊の活動に立ち帰って、仏教の活動を再組織していく。瞑想や念仏、座禅は、いつどこででもできます。

 仏教に関係ないことを削ぎ落とし、もっとも大事なことがらにふさわしい器を造る。仏教再生は、ここから始まるしかないと思うのです。

●取材・構成/小川寛大

※SAPIO2015年1月号

関連記事

トピックス

大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン