「本来はサービス内容で競争するべきなのだろうが、運賃(の値下げ)もサービスの一環という考え方もある。特に通販事業者から荷物をいただくには、運賃が大きな要因になる」
宅配便といえばすぐに思いつくのが、玄関先に現れる各社のセールス・ドライバーだろう。しかし宅配便が玄関先に届くまでには、セールス・ドライバー以外の多くの労働者がかかわっている。宅配便の大まかな流れを、ヤマト運輸を例に挙げて説明すると以下のようになる。
セールス・ドライバーが集めてきた荷物は、いったん宅急便センターに持ち帰る。そこから大型トラックで、〈ベース〉と呼ばれる全国の七〇カ所にある仕分け拠点へと集められる。数百人単位の作業員が働く仕分け拠点で、方面ごとに仕分け、下請けの長距離トラックに積み込み、順次出発する。最終便が出るのが午後九時ごろとなる。
長距離トラックが到着した仕分け拠点で荷物を降ろすと、そこでさらに細かい仕分けが行われる。例えば東京都の目黒区の場合なら、約二〇カ所ある集配拠点向けの〈ロールボックスパレット〉というカゴ車に手作業で積み込まれる。そこから、再び大型トラックで、朝七時までに集配拠点に運び込まれる。宅急便のトラックに積み込まれ、朝八時前後に宅急便センターを出発して午前中の配達を始める。
一個の宅配便が玄関先に届く舞台裏には、大掛かりなネットワークが張り巡らされており、さらにセールス・ドライバーだけではなく、下請けの長距離運転手や仕分け拠点の作業員など大勢の人手がかかっている。ヤマトホールディングスの売上高に占める人件費比率は、五〇%を超えるという典型的な労働集約型産業なのだ。
文■横田増生(ジャーナリスト)
※SAPIO2015年1月号