スポーツ

ザック通訳矢野氏「監督は僕にモウリーニョになれといった」

「モウリーニョになれ!」といわれたザック通訳・矢野大輔さん

「今後もリーダーとして代表を引っ張っていくし、次の4年間で世界を驚かせてみせる。そのベースはこの4年間でできたと思っている」(本田圭佑選手『通訳日記』より)。

 ザッケローニ監督の通訳を務めた矢野大輔氏の『通訳日記 ザックジャパン1397日の記録』(文藝春秋)が、現在8万部を超えるベストセラーとなっている。現日本代表の“ベース”とは何だったのか。本書はザックジャパンの真実を綴ったインサイドストーリーであり、強いチーム、理想的なリーダーとは何かを教えてくれるドキュメントでもある。著者の矢野氏へのインタビュー【後編】をお届けする。

 * * *
――「大輔は、私の日本での冒険において、だたの“声”であったわけではない」とザッケローニさんは書いています。通訳をされる上で、どのようなことに気を使いましたか。

矢野:ザッケローニさんになくてぼくにあるものはだた一つで、日本人的感覚をわかっているということです。そこは僕が助けになれる部分だったので、監督から意見を求められたときは、答えていましたし、できることはやっていました。

 例えばこの本にも書きましたが、選手にリラックスが必要だなと思う場面では、くだけた口調で話したり。とくにW杯中は、選手たちのプレッシャーは極限まで高まっていましたから、ポイントを絞って訳すなどの工夫もしましたね。

――日本代表の通訳に必要な知識や経験とは何でしょうか。

矢野:言葉ができることと双方の文化を深く理解していることが大前提になります。サッカーの通訳なので、競技経験があればよりよいでしょう。

 さらにぼくの場合は、ビジネスの経験が大いに役立ちました。ぼくは15歳でイタリアに渡り、トリノの下部組織でプレーした後に、スポーツマネジメント会社に就職しました。デル・ピエロ選手のマネジメントやテレビの通訳もしていたから、代表のスター選手の前や、何百人の報道陣の前でも、それほど物怖じせずに話すことができたのだと思います。それから、イタリア人と日本人の共同プロジェクトなどにも携わっていたので、双方の仕事の進め方の特徴を理解できていました。

――中村憲剛選手、前田遼一選手、李忠成選手……W杯のメンバーに選ばれなかった選手たちに、矢野さんが電話をする場面が本書に出てきます。感謝の気持ちを矢野さんから伝えてほしいと、ザッケローニ監督が矢野さんに頼んだんですね。監督と矢野さんの人柄が伝わる、印象的な場面でした。

矢野:あの時は本当に難しかったし、苦しかったですね。長い間一緒に戦ってきたメンバーですから当然ながら愛着がある。でも23人を選ばなければいけないのが現実ですし、ぼくは仕事として、ザッケローニさんの想いを伝えなければいけない……。監督は本当に心遣いの人でしたから。電話をする前に、ああ言おう、こう言おうと考えましたが、いざかけると、言葉に詰まってしまったりもしましたね。

 協会やチームの誰かが伝えてもいいことだったのかもしれませんが、監督がぼくを指名したのは、監督のメッセージをより濃く伝えたかったからだと思うんです。だから結果的に、ぼくがやってよかったと思っています。選手たちの反応も、それぞれの個性に溢れた、素晴らしいものでした。ぜひ読んでいただきたいです。

関連キーワード

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
ゆずりあい、ぶつからないように配慮するつもりがまったくない「どかないおじさん」がいる(イメージ、時事通信フォト)
新社会人が戸惑う「どかない系おじさん」 大柄な男性には場所をゆずり、女性が接触すると怒鳴り散らす
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン