昨年5月、ある女性アーティストが世界的に有名なフランスのオルセー美術館で女性器を露出するパフォーマンスを行い、世界のメディアが大々的に報道した。
世界を驚かせたアーティストの名は、デボラ・ドゥ・ロベルティス。フランスとドイツに挟まれたベネルクス地方の小国ルクセンブルク出身の30歳だ。
日本ではこれまで、「性器表現は芸術か猥褻か」について、表現の自由の問題とともに議論を呼んできた。 昨年12月には女性器アーティストで漫画家のろくでなし子氏(42)が、女性器の3Dプリンター用データをメール配信した疑いで警視庁に逮捕・起訴された。
その勾留の是非を問う法廷では、ろくでなし子氏が自らの表現活動を説明しようとして「まんこ」と口にしただけで裁判長が制止した。端から「女性器は猥褻」と決めつけているのが日本の取り締まり当局や司法の現状なのだ。
フランスではデボラは一時的に拘束されはしたものの、芸術活動であることが認められて釈放された。同じ先進国でこの違いには愕然とするとともに、多様な表現活動を許容できない当局や社会には恐怖も覚える。
彼女は女性器露出という物議を醸す行為をなぜわざわざ行なうのか。事件以降、長く沈黙を守っていた彼女が、あの日の「覚悟」と「信念」を初めて語った。
「女性器は生命そのもの。それ以外に何があるというのですか?」
デボラにとって、女性器を用いた芸術表現は「人間の真実を明かすもの」に他ならないという。だが、女性器をエロスのシンボルと捉えるのも男性心理の偽らざる一面だろう。
「もちろん、女性器を見て性的に興奮する男性もいます。ただ、同じように芸術と見る男性だっている。だから、私のことを露出主義者とかポルノという人がいても不思議ではありません。捉え方は人それぞれでもいい。しかし、私のパフォーマンスは、私にとって決して露出でもポルノでもない」