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老後資金 資産1500万円を月7万円ずつ崩せば77歳で底をつく

 総務省の家計調査による、高齢者世帯の1か月の平均支出の金額は21万7193円である(65歳以上の世帯、世帯人員平均1.96人)。

 年金はそれを大きく下回っている。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、一世帯あたりの年金収入は月額約17万6600円。差し引き約4万円の赤字は国民が“自己責任”で工面していることになる。それが「安倍時代」の宿命というわけだ。

 そして政府が進める年金カットにより、赤字は広がっていく。前号で報じたように、4月からマクロ経済スライド(※注)が発動し、年金は毎年減らされる。

 平均的なサラリーマン夫婦でいえば、10年後には今より月額約2万円減り、15年後には同3万円カットされる。いま「月4万円の赤字」の高齢者世代なら、それが「月7万円の赤字」に拡大する計算だ。

 政府は年金カットを世代間格差の是正だと説明しているが、それは嘘である。

 もっと若い世代は受給開始時点(65歳)から「カットされた金額」でスタートするから、同じように「月7万円の赤字」を覚悟しなければならない。政府の赤字を全世代に穴埋めさせるのが、「年金アベノカット」の目的なのである。

 フィデリティ退職・投資教育研究所が行なった勤労者3万人アンケートによれば、「退職後の生活資金として用意している金額」は、50代の約3割がなんと「ゼロ」。高額の資産を持つ人も含めた平均額で「1039万円」となっている。

 同研究所が行なった退職者約8000人を対象とする調査では、退職金額は平均約1700万円。今後、退職金は減らされる可能性が高いから、60歳時点での老後資金を「退職金だけの1500万円」と「預貯金+退職金の2500万円」の2パターンでシミュレーションしてみよう。

 1500万円の資金を月7万円ずつ取り崩せば、77歳で底をつく。男性の平均寿命(80.2歳)にも満たない。60歳時点で2500万円あった場合でも、月7万円ずつ取り崩せば89歳でゼロになってしまう。少し長生きすれば“老後破産”が現実になるのだ。

【*注】マクロ経済スライド/2004年に導入された物価が上がっても、受給額は物価上昇率から0.9~1.9%引いた率しか増額しない仕組み。デフレ下では適用しないルールだったため今まで発動していなかったが、アベノミクスによる物価上昇で今年の4月から初めて適用されることになった。

※週刊ポスト2015年2月20日号

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