もっとも、大企業の社員も一律に継続した給料アップを望めるほど甘い時代ではない。人事ジャーナリストの溝上憲文氏が話す。
「賃上げ交渉を機に給与体系を変え、“年功序列の是正”を進める企業が増えています。
特に大企業はボリュームゾーンで高給をもらっている40代以上の賃金はむしろ抑制し、若者や子育て世代の基本給を上げる方針を掲げています。若者の賃金を上げれば、人手不足でも新卒や30代の中途採用を募る際のインセンティブになりますしね。
賃上げとは無縁の『オーバー40社員』の中には、就学児童を抱えて住宅ローンもたんまり残っている人は多い。限られたパイの中で勝ち抜かなければ会社の業績にかかわらず大幅な減給も避けられない“受難の世代”であるといえます」
いくら最高益を更新して賃上げに沸く企業の正社員でも、一生安泰ではいられない現実がある。溝上氏はさらにこんな厳しい指摘をする。
「40歳を過ぎたら一度“職場生活の棚卸し”をして、自分が持っているスキルや専門性を磨き直すしかありません。
サラリーマン人生を少しでも長く生き残るためには、時に自分より若い上司をサポートし、気を遣いながら後輩社員たちに伝えていく役目を担うことも大事なスキルとなります」(溝上氏)
少子化対策で若者の給料を手厚くするのはいいが、その一方で中高年の財布に余裕がなければ消費拡大のスピードは鈍る。賃上げと一括りにいっても、人件費配分のバランスは労使間でおおいに議論しなければならない。