イタコが父の霊を下してくれた。
「お前が来るのをずっと待っていた。ずっとずっと心配していた。愛している」
そう言われると本当のような気がした。実父のことはまったく覚えていないが、それでも会えてよかったと思った。
次に育ての父がこういった。
「心配するな、オレはあの世で幸せだ」
これにも不思議とほっとした。すべてはこの世が勝負だと思っているが、命は今生きている人たちの横のつながりだけではなくて、縦のつながりも大事であることは間違いない。
自分を生んでくれた父と母。その上に会ったことのないじいちゃん、ばあちゃん。その上に次々と自分の祖先がつながっていく。
さらに辿れば、700万年前にアフリカのサバンナに誕生した人類の祖先に、総ての人類は必ずつながっていく。命はつながりの中で守られてきたのだと感じて、心が少し楽になる。現世で憎み、殺し合う人も、人は総て同じところにつながっているのだ。それが分かれば、もう少し他者にも優しくなれると思う。
※週刊ポスト2015年2月20日号