ライフ

恐山のイタコ介し生みの親と育ての親に会った体験を医師語る

 特別に強い信仰心はなくても、なんとなくあの世や霊的な存在を信じている人は少なくないだろう。信心深くないと告白するベストセラー『がんばらない』著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が、青森の恐山でイタコを介して生みの親と育ての親に会った体験について語った。

 * * *
 僕は特別な宗教を持っていない。信心深くはないが日本ではよくある仏教徒である。神社に行っても教会に行っても、お寺に行っても、それなりの思いで手を合わせる。頭も下げる。それはひょっとすると、生きていることへの感謝のようなものかもしれない。

 昔は「病院の経営がうまくいきますように……」とか「自分の書いた本が売れますように……」とか、ご利益をおねだりした時期もあった。が、今は一切しなくなった。ただ生きていることに感謝をして手を合わせるだけだ。

 魂とか霊の存在は信じていないが、目に見えない“大いなるものの力”が存在すると感じたことはある。産んでくれた父と母は、わけあって僕を育てることができず、手放した。

 そして2歳少し前で、僕を拾ってくれる夫婦が現れた。貧乏な夫婦で、さらに母親になってくれた人は重い心臓病を抱えていた。2つの困難があるにもかかわらず、自分の息子として育ててくれた。

 18歳になったとき、大学進学を巡って養父と対立した。「行きたい」とお願いしたが「バカヤロー」と怒鳴られ、咄嗟に僕は父の首を絞めた。人生の修羅場──。

 そのとき、どこからか「やめろ」という声が聞こえた。それが何だったのか、どこから聞こえてきたか、分からない。しかし、そのひと声でハッと我に返った。

 紙一重だった。あの声がなければ、僕は命の恩人を殺していた。初めて大いなるものの存在を感じた瞬間だった。

 それから生き方が変わった。育ててくれた父と母に感謝した。しかし、二人が亡くなる前に「ありがとう」と言えなかった。それがずっと心に引っかかっていた。

 僕は“あの世”なんて信じていないのに、青森県の恐山に行き、イタコに会った。家庭の事情を説明すると、まず実の父に会いなさいといわれた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン