国際情報

中国空母「遼寧」vs海自イージス艦護衛艦 日中海軍兵器比較

 仮に尖閣諸島で日中間で軍事衝突が起きたとき、米軍は参戦しないのでは、という議論がある。もし、そうなった場合、日本はアメリカなしで中国と戦うことができるのだろうか。中国の国防費は日本の10倍、兵力も10倍に達する。軍事ジャーナリストの井上和彦氏はそうした物量だけでは日中の本当の軍事力は計れないと指摘する。

 * * *
 兵器先進国には共通点がある。アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スウェーデン、そして日本。これらの国々は同時に自動車大国なのだ。つまり優秀な兵器はすべて優秀な自動車を独自で設計製造できる自動車先進国なのである。例外はイスラエルとロシアしかない。

 自動車の設計・製造には、様々な機器を一つにまとめ上げるシステム・インテグレーションの技術と品質管理の技術が求められる。そうした技術が確立された国だからこそ、厳しい環境下での酷使に耐えうる兵器が製造できるのだ。

 ところが中国は、ハイテク兵器の完成品を入手して、これを分解して調べ上げた上で製品開発を行なうという“リバース・エンジニアリング”で兵器を作っているため、信頼性は日本の足元にも及ばない。

 世界を騒がせている中国の航空母艦の保有経緯をみてもこのことは明らかだろう。中国は、ウクライナで建造中止となった旧ソ連製空母「ワリャーグ」を鉄屑として購入し、あろうことかこれを再生して中国初の空母「遼寧」として就役させた。この再生空母は、艦載機の射出用カタパルトも装備しておらず、米海軍の原子力空母との性能差は月とスッポンだ。

 しかも致命的なのは、中国海軍の対潜能力が極めて脆弱だということである。これでは世界一の性能を誇る日本の「そうりゅう」型潜水艦の餌食となるだけだ。

 加えて、海上自衛隊の「あたご」型、「こんごう」型イージス艦のような超ハイテク防空艦を保有していないために、航空機からのミサイル攻撃には無力に等しい。つまり一点豪華主義のように保有する空母「遼寧」は張り子の虎なのである。

 これに対して海上自衛隊は空母保有に向けて、世界最強の空母機動部隊を保有する米海軍と協同しながら準備を進めている。まさしく護衛艦「いずも」などは、本格的空母保有前の“ビンゴゲームのリーチ”のような存在だろう。

※SAPIO2015年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト