この特区提案については、引き続き国での議論が継続しているところだが、MKタクシーを運営するエムケイ株式会社代表取締役社長の青木信明氏はこう期待を寄せる。
「国家戦略特区への期待は大いにあります。行政が何をしたらいいかというと、現在、運転者証の発行は運転者登録センターで行われていますが、たった2日間の講義を受けただけで(タクシーの)運転者証が発行されます。そうではなくて、例えば当社がやっているように2週間の期間を設けて、運転技術はもちろん、接待マナーや地理教育などを受講しなければならないようにしたらいいんです。
さらに、運転者証の更新時においても研修を行い、その人の事故歴や苦情歴も検討材料にしていく。これによってまず適格者のハードルが上がり、運転者の質はかなり良くなります。
(他方で、)今、違法状態にあるタクシー会社はいくつもあると言われています。例えば道路運送法では運行管理者が必要事項の確認と指示を行い、点呼簿や業務日報に押印することが義務づけされていますが、まともにやっている会社は少ないと聞きます。また、運転者の1か月の拘束時間は日勤者の場合が299時間、隔日勤者の場合が262時間と決まっていますが、守られていないことがあります」
このように、タクシーのサービスの質を高め、労働環境を守るための規制を厳格に運用することの方が、「公定幅運賃」よりよほど求められていることではなかろうか。
文■原英史(政策工房社長)
※SAPIO2015年3月号