国際情報

中国で死刑から無罪判決 冤罪事件に対し2200万円の賠償命じる

 中国で2006年7月、殺人犯として逮捕、一審の判決で死刑を宣告されたにもかかわらず、昨年8月の2審判決では無罪を勝ち取った男性の賠償訴訟が2月15日結審し、裁判所は国に対して、男性に合計で113万9000万元(約2200万円)の賠償金を支払うよう命じる判決を下した。

 中国では最近、逮捕された市民が無罪を勝ち取るケースが増えているが、これだけ高額の賠償金の支払い命令は初めてで、中国の法整備強化に共感が広がる一方で、警察などのずさんな捜査に批判が高まっている。

 この男性は福建省福州市在住だった念斌氏(38歳)。2006年7月に念氏の自宅近くの民家で10歳と8歳の児童が死亡した事件で、念氏が児童2人に毒物を飲ませて殺害したとの疑いで逮捕された。

 念氏は一貫して無罪を主張したが、2011年の一審判決で有罪となり死刑判決を受けた。念氏は直ちに控訴し、福州市の中級(高等)裁判所は昨年、無罪判決を下した。中国は二審制のため、自動的に無罪判決が確定した。

 晴れて釈放された念氏は福州の中級裁判所に国家賠償請求訴訟を起こし、念氏が自由を奪われていた8年間あまり、2936日間の給料などのほか、精神的苦痛を受けた慰謝料などで1500万元(約2億8500万円)を要求。これに対して、裁判所は中国の最高法院(最高裁に相当)が定めて規定によって、給料など損害賠償額は58万9000元、精神的な苦痛などの賠償額を55万元の計113万9000元の支払いを決定した。前者の賠償額は1日当たり200.69元として計算されている。

 これを高いとみるか、安いとみるかは、中国内でも意見が分かれているが、冤罪事件による国家賠償で、これだけに高額な金額が支払われるのは初めてで、中国メディアの報道でもおおむね好意的に伝えられている。

 だが、ネット上では「国有金融機関の幹部の1年分の給料に過ぎず、8年以上も自由を束縛され、監獄のなかで耐え難い苦痛を強いられたことを考えれば、かなり低い額だ」との趣旨のコメントが目立っている。

 さらに、警察の捜査に疑問を呈するものも少なくなく、「いい加減な捜査で捕まえて、あとは拷問による自白で有罪にするのが通例。今回の無罪判決は司法改革を目指す習近平指導部の強い意向が働いているのでは」との書き込みもみえる。

関連キーワード

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン