──会社を米ファンド「ベインキャピタル」に委ねて大丈夫か。
大平:実は昨年9月以降、ベインからTOBの話を持ちかけられていたのは私だった。何度か会って説明した。私の希望も伝えた。キノコの将来性や海外戦略も話した。それが、ベインがウチの会社の経営に積極的になった理由だと思う。しかし、最終的には彼らのオファーを断わったために、現経営陣に近寄ったのだろう。
──現経営陣と銀行にうまく利用された?
大平:ベインはTOBに関するニュースリリースで中国市場の将来性について語り、ロシアや東欧国などでの海外生産を提案した。『雪国まいたけブランドの海外各国での展開』などグローバル戦略をぶち上げている。これは私の持論を踏襲したものだ。彼らの節操のなさに呆れるが、それはいいんだ。肝心なのは、彼らにキノコが栽培できるかどうか、そこなんだ。
──栽培技術が難しいと?
大平:栽培技術を確立して軌道に乗せるまで、私は極貧のなかで生きて、死に物狂いで頑張ってきた。その甲斐あって、私はキノコと会話できるまでになった。ひと目でキノコが何を欲し、それにどう応えてやればいいかがわかる。
自動車や機械の部品を作るなら、精緻なコンピューターでできるだろう。だが、キノコの難しさはそれとは比較にならないし、口でノウハウを伝えられるものではない。運営に乗り出して初めて、金融屋のベインはそのことに気付くだろう。
※週刊ポスト2015年3月13日号