安藤ハザマから送られてきた「見積内訳書」には、「常緑樹 刈払い 58万9120円」「雑木林 刈払い 56万7000円」などの項目が並ぶが、それは「実際に行なった作業とは関係ない費目」(清藤代表)だ。7項目の費用の合計はちょうど300万円(税込み324万円)であり、「300万円」を作り出すための架空の見積もりである。
そもそも海渡建設はO社から仕事を請け負っており、安藤ハザマとは直接の契約関係にはなかった。
問題は、安藤ハザマがこの書類によって環境省に費用を追加請求することが可能だった点だ。環境省の除染事業の「仕様書」を見ると、支出額の変更について〈全ての証明書類の提出がない場合であっても、提出された証明書類をもって金額の変更を行うものとする〉と記されている。
つまり領収証などの正式な書類がなくても、「追加費用がかかった」と請求すれば認められる可能性がある。公共事業費があとから膨れあがる定番の悪しき“風習”がここにもある。
もし作業していないにもかかわらず安藤ハザマが環境省から追加費用を受け取っていれば架空請求であり、環境省は税金を不正に支出したことになる。さらに疑うなら、安藤ハザマはすでに除染手当を受け取っているにもかかわらず下請けに渡さず、それとは別に架空の作業の費用として不正に税金を手にしようとしている可能性もある。安藤ハザマのCSR推進部に質した。
「未払いがないよう協力会社(下請け)には管理徹底している。海渡建設に対しても未払いはないと認識している。300万円は作業費ではなく、O社と海渡建設で労賃をめぐる紛争が発生したため、元請けの責任として『解決金』を支払ったもの。300万円の見積もり書の件は承知しておらず、環境省に追加費用を請求したことはない」
では清藤代表が安藤ハザマの担当者から受け取ったメールと添付ファイルは何だったのか。事実を答えているとは到底考えられない。
O社からはコメントは得られなかった。環境省除染チームからも締め切りまでに回答はなかった。
※週刊ポスト2015年3月20日号