ビジネス

欧米にあまり見られぬ株主優待 日本で広がったその100年史

 日本では株主になると、その企業の業務に関わる優待が得られることは広く知られている。映画が割引きで見られたり、お得なランチが食べられたりと様々な「優待」があるが、これは欧米にはほとんど見られない日本独自の制度である。「優待」はどう広がってきたのか。

 お中元やお歳暮などの風習が起源とされる「優待」の歴史は長い。東武鉄道では100年以上前から優待制度があった。

「当社の社史では、営業を開始した明治32年(1899年)に『優待株数300株以上、優待範囲鉄道全線、優待株主数41名』という記載があります」(広報部)

 戦後は鉄道、航空、百貨店などの業界で優待制度が設けられたが、様々な業種に広がるのは1980年代に入ってからだとされる。

「1980年代前半の円高不況下で個人投資の減少を危惧した企業が導入に乗り出した。1982年に明治製菓が自社商品の詰め合わせを株主に送り、割引券の優待ばかりだった時代に話題になった」(証券業界関係者)

 贈呈できる自社商品を持たない業種でも、優待に類するものとして野村證券が自社で編集した書籍『83年 税金の本』を株主に贈呈。証券業界では、他にも山種証券(現・SMBCフレンド証券)が創業50周年を記念して1983年に株主に新米5キロを贈る優待をスタートさせた(創業者・山崎種二が米相場で身を興したことに由来)。

 1980年代後半のバブル期には株の値上がりが脚光を浴び、優待はあまり注目されなくなった。

 東証の1988年の調査では株主優待制度を持つ企業は126社だったが、野村インベスター・リレーションズによれば今年1月末時点で全上場銘柄3845(REIT、ETF等を含む)のうち優待制度を導入しているのは1175銘柄と過去最多。1990年代のバブル崩壊後に急増した。

「1990年代半ば以降、株式の持ち合い解消が進んだことも背景にあります。安定株主を求めて各企業が個人投資家へと裾野を広げようとして、優待制度を拡充していきました。リーマン・ショック以降は株価対策という意味合いも持つようになった」(野村インベスター・リレーションズ常務取締役の林清隆氏)

 業種はさらに広がり、情報通信やメーカーなどにも導入が目立つ。

「コマツは昨年、自社製品(建機)のオリジナルミニチュアを株主に初めて贈っています。もともと株主総会でお土産として配っていたものでしたが、総会に行けないけれど欲しいという声があって実施に踏み切りました」(同前)

 株価は上昇基調にあるが、今の優待ブームはいつまで続くか。

※週刊ポスト2015年3月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン