国際情報

中国大学 教育相「西洋の価値観排除」も通達無視の大学続出

 中国の袁貴仁教育相が、国内の大学に「西側の価値観」を「排除」するよう指示したことが大きな話題になった。しかし北京のほとんどの大学が教育相の指示に従わず、欧米の学者による英語やその翻訳本を教科書として売っていることが分かった。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

 ネット上では「教育相の発言は学問の自由を損なうものだが、さすがに大学関係者は教育相とは違って良識をもっているようだ」との声が上がっている。

 教育相の発言は今年1月29日、北京大や清華大など名門大学の責任者らを集めた会合で、「われわれの教室に西側の価値観を広める教科書を絶対に入れてはならない。中国共産党の指導を誹謗し、社会主義に泥を塗る言論が大学にはびこるのを決して許してはならない」などというもの。

 中国国営新華社電が同日、この発言を配信するや、中国の知識人からの大きな反発を呼んだ。

 意外なことに、中国共産党機関紙「人民日報」のニュースサイト人民網は、文化大革命を念頭に、「極端に走って、知識分子に対して“左”が行なったような歴史の過ちを繰り返してはならない」とした天津の名門大学、南開大学学長のコメントを掲載し、教育相の発言に強い不満を示した。

 また、米紙「ニューヨーク・タイムズ」も、西洋の思想が(体制維持にとって)潜在的な危険だとする考えに対し、「共産主義自体が西洋からの輸入品だ」としたうえで、「教育相の発言は、毛沢東が発動し、混乱と暴力で、知識人の世代に傷跡を残した文化大革命時代の思想キャンペーンを想起させる」との中国の匿名の大学関係者の発言を紹介している。

 北京の大学は3月に春の学期を迎えたが、これらの知識人の反応を裏付けるように、北京大学や清華大学などほとんどの大学ではキャンパス内の書店では、教育相の指示に反して、従来通りの欧米の学者による学術書が教科書として売られていた。

「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」(電子版)の書き込みでは「香港では大学で思想問題をタブーにすることは教育の侵害にも通じることであり絶対にあり得ないが、これは北京でも共通しているようで、中国の知識人や教育者の思考はまだ党幹部の教育相ほど冒されていないことを証明しており、嬉しいニュースだ」との声が上がっている。

関連キーワード

トピックス

ファーストレディー候補の滝川クリステル
《ステマ騒動の小泉進次郎》滝川クリステルと“10年交際”の小澤征悦、ナビゲーターを務める「報道番組」に集まる注目…ファーストレディ候補が語っていた「結婚後のルール」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人の時効が消滅》「死ぬ間際まで與一を心配していました」重要指名手配犯・八田與一容疑者の“最大の味方”が逝去 祖母があらためて訴えた“事件の酌量”
NEWSポストセブン
新井洋子被告(共同通信社)
《元草津町議・新井祥子被告に有罪判決の裏で》金銭トラブルにあった原告男性が謎の死を遂げていた…「チンピラに待ち伏せされて怯えていた」と知人が証言
NEWSポストセブン
東京・表参道にある美容室「ELTE」の経営者で美容師の藤井庄吾容疑者(インスタグラムより)
《衝撃のセクハラ発言》逮捕の表参道売れっ子美容師「返答次第で私もトイレに連れ込まれていたのかも…」施術を受けた女性が証言【不同意わいせつ容疑】
NEWSポストセブン
昨年、10年ぶりに復帰したほしのあき
《グラドル妻・ほしのあきの献身》耐え続けた「若手有望騎手をたぶらかした」評 夫・三浦皇成「悲願のG1初制覇」の裏で…13歳年上妻の「ベッドで手を握り続けた」寄り添い愛
NEWSポストセブン
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したという坂口
《お相手は59歳会社員》坂口杏里、再婚は「ゼロ日」で…「ガルバの客として来てくれた」「専業主婦になりました」本人が語った「子供が欲しい」の真意
NEWSポストセブン
愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン