ビジネス

日本農業 果実、酪農、葉物野菜など高付加価値作物へ転換を

 オランダは、小国でありながら米国に次ぐ世界2位(約10兆円)の農業輸出国である。農政改革に行き詰まっている日本は、オランダのように付加価値(=競争力)の高い「クオリティ農業」に一気に転換すべきだと大前研一氏は考えている。クオリティ農業を日本が目指した場合、具体的にはどのような問題が立ちふさがるかについて、大前氏が解説する。

 * * *
 日本の農業の問題は大きく二つある。一つは、コメに軸足を置いていることだ。日本はコメを特別扱いしてきたが、世界的に見るとコメは小麦やトウモロコシと同じく1トンいくらで売買されている最も付加価値の低い「穀物」にすぎない。そして穀物はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの面積大国が勝つ、クオリティ農業の対極にある作物だ。

 にもかかわらず、日本は「コメを作っていれば食べていける」ようにしてきたために国際競争力を失ってしまったのである。いわば粗鋼生産だけ続けていて自動車を作っていないようなものである。今後はもっと付加価値の高い果実、酪農、葉物野菜、花卉(かき)類などにシフトしなければならない。

 もう一つは、食料安全保障の論理で食料自給率を中心に考えていることだ。これも本連載で解説したが、食料安保のネックは食料ではなく石油である。つまり、たとえコメが自給できる体制にあったとしても、いざという時は石油の備蓄が先に切れるので、灌漑(かんがい)もできなくなるし、トラクターも動かなくなるし、肥料もつくれなくなる。

 日本の場合、食料安保は実はエネルギー安保なのだ。しかも、コメだけの備蓄であれば1年もつから、半年ぐらいの危機は乗り越えられる。したがってコメが食料安保の対象になること自体がおかしいのだ。

 そもそも食料自給率を中心に考えたら、このグローバル社会では競争力はつかない。食料は世界の最適地で作ればよいのである。輸出できるものがあれば、食料は海外の様々な国から輸入できる。

 実際、オランダは世界第2位の農業輸出国でありながら、穀物の自給率は14%で日本の半分だ。つまりオランダは、足りない食料は世界で最も競争力のある国から安価なものを、安全・安心さえ担保されていれば、平気で輸入しているわけだ。食料安保は、世界中の国を敵に回さない限り、心配無用なのである。

※週刊ポスト2015年3月27日号

トピックス

今年80歳となったタモリ(時事通信フォト)
《やったことを忘れる…》タモリ、認知症の兆候を明かすなか故郷・福岡に40年所有した複数の不動産を次々に売却「糟糠の妻」「終活」の現在
NEWSポストセブン
提訴された大谷翔平サイドの反撃で新たな局面を迎えた(共同通信)
大谷翔平、ハワイ別荘訴訟は新たな局面へ 米屈指の敏腕女性弁護士がサポート、戦う姿勢を見せるのは「大切な家族を守る」という強い意思の現れか
女性セブン
予選敗退した北口榛花選手(時事通信フォト)
《世界陸上が東京開催ではなかったら…》予選敗退の女王・北口榛花が背負った重圧「やりを全く投げられなかった故障期間」ロス五輪を目指して長期休養へ
NEWSポストセブン
タレントでミュージシャンの桑野信義(HPより)
《体重58キロに激減も…》桑野信義が大腸がん乗り越え、スリムな“イケオジ”に変貌 本人が明かしていた現在の生活
NEWSポストセブン
総裁選の”大本命”と呼び声高い小泉進次郎氏(44)
《“坊ちゃん刈り”写真も》小泉進次郎と20年以上の親交、地元・横須賀の理容店店主が語った総裁選出馬への本音「周りのおだてすぎもよくない」「進ちゃんは総理にはまだ若い」
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
《2人の信者が入水自殺》「こいつも死んでました」「やばいな、宇宙の名場面!」占い師・濱田淑恵被告(63)と信者たちが笑いはしゃぐ“衝撃音声”【共謀した女性信者2人の公判】
NEWSポストセブン
雅子さまの定番コーデをチェック(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《“定番コーデ”をチェック》雅子さまと紀子さまのファッションはどこが違うのか? 帽子やジャケット、色選びにみるおふたりの“こだわり”
NEWSポストセブン
おぎやはぎ・矢作兼と石橋貴明(インスタグラムより)
《7キロくらい痩せた》石橋貴明の“病状”を明かした「おぎやはぎ」矢作兼の意図、後輩芸人が気を揉む恒例「誕生日会」開催
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
「一体何があったんだ…」米倉涼子、相次ぐイベント出演“ドタキャン”に業界関係者が困惑
NEWSポストセブン
「LUNA SEA」のドラマー・真矢、妻の元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《大腸がんと脳腫瘍公表》「痩せた…」「顔認証でスマホを開くのも大変みたい」LUNA SEA真矢の実兄が明かした“病状”と元モー娘。妻・石黒彩からの“気丈な言葉”
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン