具体的には、総コレステロール値200~279kg/dlでは死亡率はほとんど変わらず、180 mg/dl未満のグループが最も高かったのである。
本誌前々号で報じた通り、コレステロールには血管を修復する機能がある。薬でそれを無理に減らせばやはりリスクがあるのだ。「数値を下げれば安心」と考えるのは誤解では済まず、やや大袈裟にいえば自殺行為なのである。
これまで紹介してきた大規模調査は、母集団に薬を飲んでいる人といない人の両方が含まれるものや既往症のない健康な人だけを対象としたものだったが、薬を飲む人に限った調査でも同じ結果が出ているのである。
しかも、世の中のどんな薬にも副作用がある。コレステロール低下剤(スタチン系)の添付文書には副作用として「下痢」「胸やけ」「便秘」「頭痛」など、よくある症状の他に、重大な副作用として筋肉が壊れて歩行困難などの症状を引き起こす「横紋筋融解」や「劇症肝炎」、アナフィラキシーといった「過敏症」などが挙げられている。
多くの薬が存在するのは効能に副作用を上回る価値があると認められたからだ。「コレステロール値を下げる」という効能に疑問が生じているのだから、副作用リスクへの評価はより厳しくあるべきだ。
※週刊ポスト2015年4月3日号