マスメディアがない時代、ましてやインターネットがない時代に広くあまねく多くの学生に「ウチは採用やってますよ!」を伝えるのは簡単なことではありませんでした。となると大学と培った関係性から採用をするわけで、元々新卒採用は学歴差別・区別になりやすい土壌があったのです。
以前は指定校というやり方があり、採用する大学を決めていた時代もありました。ただ、数点で大学の合否が決まるくらい受験戦争が加熱している中、少しの差でウチの大学に求人が来ないのはいかがなものかと、国会でも問題になったことがありました。
最近の「学歴差別」という言葉は、自由応募が広がって以降誕生した世界観ですね。「就職協定」があった時代も、人事に某大学の学生が電話をかけると「まだ採用していません」と言われ、慶應の学生が電話をすると「来てもいいですよ。OB紹介しますよ」となっていたものです。でも、当時はこうした状況が公になっていなかった。
学歴差別が取沙汰されるようになったのは、大学のあり方が1990年代くらいから変わってことも一つの理由です。大学の数は1990年代から増えていき、元々あった大学でも学部数が増えてきました。18歳人口に対する進学率が約50%になり、短大を含めるとより多くの人が高校卒業後も教育を受けるようになってきています。そんな競争の中、そこで、さらにネットが出てきたわけですよ。ネット就活の時代になり、「僕のド底辺Fラン大学じゃ○○社に入るなんて無理……」と思っていたであろう人にも情報が手に入り、応募ができる状態になりました。就職ナビの一括応募で大量に人がやってくるのです。学歴差別に怒りを覚える一方で、大学の事情、応募活動の事情が変わってきたことで差別・区別せざるを得なくなっています。
学歴差別については、一部都市伝説みたいなこともありますが、大学生のレベルに対する不安が高まったというのも事実。昔も今も大学生ってバカだと揶揄される対象だったってのはありますが、ゆとり教育でダメになったのでは、AO・推薦でダメになったのか? なんて人事の中でも言われていたことがありました。人事が若者の事情をあまり分からないところもあります。
「即戦力」ということは通常はありえないのですが、「立ち上がりの早い人材」「伸びそうな人材」そして、あまりこの言葉は使いたくはないのですが、「優秀人材」の早期囲い込み現象が生まれているのです。