1992年に2200億円が投じられて完成したハウステンボスは、17世紀のオランダの街並みを東京ドーム33個分という広さの敷地に再現したテーマパークだ。4つのホテル、様々なレストランやショップがあり、実際に人が居住できるエリアもある。年間200万人以上が訪れる場内は、差し詰め一つの街だ。
彼の言うハウステンボスの観光ビジネス都市化とは、この地を単なるテーマパークとして捉えるのではなく、広大な「都市の実験場」として新しい事業や技術の発信地へと変えていくという構想である。
その第一弾として1月に発表されたのが、7月にオープン予定のスマートホテル「変なホテル」の建設だ。
澤田氏は遡ること2年前、東京大学や鹿島建設などの研究所と組み、最新の断熱素材や塗料、放射熱を利用したスマートハウスを敷地内に建て、滞在時に自らも利用してきた。新しいスマートホテルはそこで得た知見を活かし、最新のロボット技術や顔認証システムも加えて導入。なんと受付には人型ロボットが立つ予定だという。
「ホテル経営は光熱費と人件費、建設費が最も大きな費用。裏を返せば自然エネルギーの活用で電気代を半分にし、フロント業務や荷物預かり、掃除などをロボットによって自動化できれば、居心地が良くて徹底的に安いホテルができる。
『変なホテル』では東大や理化学研究所、国内外のロボット技術を開発するメーカーが多数参画しています。僕らは実際にホテルを運営することで課題や問題点を抽出し、彼らにフィードバックしていくことになる。『変』とは変化の変。常に最新の技術を投入して進化するホテルという意味なんです」
ハウステンボスを一つのテーマパークとして見ると、その商圏は関東の十分の一以下だと言われる。そのため成長には自ずと限界があるが、澤田氏はそれを事業の発信地や技術開発の実験地=「観光ビジネス都市」と捉えることで、その限界を乗り越える可能性を見出したわけだ。
彼らはこの「変なホテル」を「0号ホテル」と呼んでいる。現在は開発を兼ねるため7000円から1万4000円の宿泊費を予定しているが、今後の実践の場における改良によって、最終的には3000円台でも採算が合うホテルになるはずだ、と澤田氏は説明する。その競争力を武器にいずれは100店、200店と世界展開していくことを見据えているそうだ。
※SAPIO2015年4月号