ランニング姿の写真からもわかるように、ルビッツ副操縦士はスポーツ好きで、ドイツで行なわれた複数のハーフマラソンを走破している。大野氏が指摘する。
「ハードなマラソン競技に出場し、ゴールするには強い精神力と前向きな気持ちが必要です。彼がうつ病の症状に苦しむ患者だとしたら、その疲労感や気力減退、不眠・仮眠などは日常生活に支障が出るほどのものでしょう。ハーフマラソンに出場するほどの気力を持ち得ることは考えにくいように思います」
彼の発言にもうつ病患者らしくない兆候が見られる。うつ病患者の復職支援活動を行なっているメディカルケア虎ノ門の五十嵐良雄・院長が語る。
「『歴史に名を残したい』という発言に違和感を覚えます。うつ病患者は気持ちが落ち込んでいくものなので、そういう“前向き”なことはあまりいいません。私の経験則からいえば、うつ病の母親が残される子供のことを思って心中することはありますが、赤の他人を道連れにするというのはうつ病患者によくある考え方ではありません」
専門家の見解は「うつ病だから無差別殺人を起こした」という考え方は短絡的で危険という点で一致している。にもかかわらず、日本の新聞、テレビの大メディアは、自らは十分な検証をしないまま、今も現地当局の発表や海外紙の報道の内容を垂れ流している印象がある。
※週刊ポスト2015年4月17日号