国際情報

米でも日韓亀裂生んだ慰安婦問題 回復に朝日の謝罪広告必要

 朝日新聞は昨夏、一連の慰安婦報道について、誤報を認め訂正・謝罪記事を掲載したが、1990年代以降、「慰安婦=性奴隷」として定着した国際世論の前では、ほとんど意味が無いという。在米ジャーナリストの高濱賛氏がレポートする。

 * * *
 2月18日、作家の馬場信浩氏(73)ら米国在住の日本人3名は東京地裁において朝日新聞を提訴した。訴状によれば、米国在住の日本人が蒙った被害(中でもグレンデール市における慰安婦像設置にかかわる公聴会での名誉毀損、地域社会における日本人に対するイジメ、宗教活動における困難など)に伴う精神的苦痛への慰謝料と、〈慰安婦誤報を引用、転載して誤解を拡大した海外報道機関〉への〈真摯な謝罪広告〉の掲載を朝日新聞に求めている。

 原告の代理人を務める弁護士の徳永信一氏は「朝日の誤報が国際世論を誤った方向に導いたといえるかどうか」が裁判の最大の争点になると見込む。徳永氏が語る。

「新聞社が世間一般に負う法的責任である真実報道義務に加え、本件ではとくに訂正義務における不法行為責任を朝日に問いたい。原告は、ロサンゼルス近郊の地域社会で韓国人と日本人の間に深い亀裂を生んだ慰安婦問題について、誤解を解き住民同士の分断を回復するには朝日の謝罪広告が必要だと訴えている」

 ロサンゼルスの日本人街(通称リトル・トーキョー)にある高野山米国別院で海外開教師を務める林竜禅師(30)も原告の一人。訴状によれば、林師の活動拠点であるリトル・トーキョー周辺で〈日本人が韓国系の施設を借りるのに跪いて謝罪すること〉を要求されたこともあったという。

 林師に布教活動や教育現場での妨害やイジメについて改めて質すと「寺に来られる方々から(慰安婦問題が及ぼしている影響については)いろいろ伺っている」と述べた。

 また、学校での日本人学童に対するイジメについてロサンゼルス日本総領事館の倭島岳彦・広報担当領事は「これまで在米邦人からイジメに関する件で何度か話を聞いているが、口外しないことを条件に聞いており、公表するわけにはいかない」という。

 米国各地で「慰安婦像」設置反対運動に関わる在留邦人のT氏は、その実態についてこう説明する。

「親などから“反日感情”を植え付けられた韓国系学童が、日本人とみると嫌がらせをしているのは間違いないが、もし学校なり、教育委員会に通報すれば、イジメはますます強まる恐れがある。それを警戒して米国内ではことを荒立てたくないというのが保護者の心情だ。その辺のデリケートなところを日本に住む日本人、とくに政府関係者にはわかってもらいたい」

※SAPIO2015年5月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン