放送前から、主人公の文が無名であることを理由に苦戦が予想されていた。それに加え、郷土史家のひとりはこう分析する。
「今回の大河ドラマは史実を端折りすぎている。たとえば、吉田松陰が尊皇派となるのは江戸から長崎に向かう途中で京都に立ち寄るからですが、そのシーンがなかった。松陰が尊皇派となる歴史的に重要な過程を無視してしまっているから視聴者は混乱する。
また松陰が師事した佐久間象山や、松陰の妹で、文の姉である千代の存在が無視されていることも気になる。ドラマだからある程度は仕方ありませんが、最低限必要な史実ですらカットされているから、歴史ファンにとってはリアリティに欠けるのです」
防府市の大河ドラマ事業は報じられたドラマ館の総工費1億2000万円も含め、3億134万円にのぼる。昨年12月の2320万円をはじめ、たびたび補正予算が組まれてきた。市民から怒りの声があがるのは当然だ。
「ドラマ館を見学した人で“よかった”という感想を漏らした人を1人も知りません。防府らしさもなく、ドラマ館を作る意味があったのか。こっちは何の恩恵も受けていない。ルルサス内の100円ショップのほうが混んでいるくらいです」(ルルサス内の商店主)
事業費5000万円を投じたとされる観光周遊バス「ほうふ花燃ゆ周遊バス」は朝9時から夕方4時まで30分に1本の間隔で、1年間運行される。それも「土日でも空いているし、平日は回送車が走っているのかと思うほど」(地元住民)の閑散ぶりだ。
※週刊ポスト2015年5月1日号