国内

対中国戦略 日米で完全に歩調を揃えた安倍首相訪米は「大勝利」

 安倍晋三首相の訪米を単に成功と評価するのは正確ではない。大勝利というべきだ。誰に勝ったのかといえば、中国である。だが、マスコミはどうも、その核心部分を正確に認識できていないようだ。

 それは、たとえば保守派の読売新聞でさえ米議会での安倍演説を「大戦『痛切な反省』」(4月30日付)という大見出しで報じたあたりに、にじみ出ている。中国や韓国が唱える歴史認識問題を演説の焦点と捉えていた。そうではない。演説のハイライトは日米がかつて互いに戦った戦争の傷と痛みを乗り越えて、いまや対中国戦略で完全に歩調をそろえた点にこそあった。

 安倍首相は演説で傍聴席に招いたローレンス・スノーデン海兵隊中将と栗林忠道硫黄島守備隊司令官の孫である新藤義孝衆院議員を紹介し、2人の握手を「歴史の奇跡」と評した。米国の議員たちは立ち上がって拍手で応じた。

 そのうえで首相は「太平洋からインド洋にかけての広い海を自由で法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」と述べた。もちろん中国を念頭に置いている。「中国の無法を許さない」という強いメッセージである。

 そんな首相の対中認識はオバマ大統領との会談でしっかり共有された。大統領は「中国は東アジアや東南アジアで力を拡大しようとしている。中国のやり方は間違っている」と言い切ったのだ。

 米国は一時、中国の習近平国家主席がもちかけた新型大国関係という事実上の「太平洋の縄張り分割提案」に乗りかけていた。だが、中国が一方的に防空識別圏を設定した2013年11月を境に、再び対中警戒感を高めていく。

 今回の首脳会談では「日米が共同して中国に対処する」という路線が明確になった。安倍訪米は安保法制見直しをテコに、揺れていた米国を再び日本の側に呼び戻す役割を果たしたと言っていい。中国は米国取り込みに失敗した。だから「勝利」なのだ。

関連記事

トピックス

創価学会の「自民党離れ」は今年4月の衆院島根1区補選でも
【自公連立終焉へ】公明党の支持母体・創価学会の「自民党離れ」が進む 岸田首相の「解散やるやる詐欺」に翻弄され“選挙協力”は風前の灯火
週刊ポスト
殺人を犯すようには見えなかったという十枝内容疑者(Facebookより)
【青森密閉殺人】「俺の人生は終わった」残忍な犯行後にキャバクラに来店した主犯格の社長、女性キャストが感じた恐怖「怒ったり、喜んだり感情の起伏が…」近所で除雪手伝いの裏の顔
NEWSポストセブン
亡くなったことがわかったシャニさん(本人のSNSより)
《ボーイフレンドも毒牙に…》ハマスに半裸で連行された22歳女性の死亡が確認「男女見境ない」暴力の地獄絵図
NEWSポストセブン
長男・正吾の応援に来た清原和博氏
清原和博氏、慶大野球部の長男をネット裏で応援でも“ファン対応なし” 息子にとって雑音にならないように…の親心か
週刊ポスト
殺害された谷名さんの息子Aさん
【青森密閉殺人】手足縛りプラスチック容器に閉じ込め生きたまま放置…被害者息子が声を絞り出す監禁の瞬間「シングルで育ててくれた大切な父でした」
NEWSポストセブン
竹内涼真と
「めちゃくちゃつまんない」「10万円払わせた」エスカレートする私生活暴露に竹内涼真が戦々恐々か 妹・たけうちほのかがバラエティーで活躍中
女性セブン
史上最速Vを決めた大の里(時事通信フォト)
史上最速V・大の里に問われる真価 日体大OBに囲まれた二所ノ関部屋で実力を伸ばすも、大先輩・中村親方が独立後“重し”が消えた時にどうなるか
NEWSポストセブン
大谷が購入した豪邸(ロサンゼルス・タイムス電子版より)
大谷翔平がロスに12億円豪邸を購入、25億円別荘に続く大きな買い物も「意外と堅実」「家族思い」と好感度アップ 水原騒動後の“変化”も影響
NEWSポストセブン
被害者の渡邉華蓮さん
【関西外大女子大生刺殺】お嬢様学校に通った被害者「目が大きくてめんこい子」「成績は常にクラス1位か2位」突然の訃報に悲しみ広がる地元
NEWSポストセブン
杉咲花
【全文公開】杉咲花、『アンメット』で共演中の若葉竜也と熱愛 自宅から“時差出勤”、現場以外で会っていることは「公然の秘密」
女性セブン
京急蒲田駅が「京急蒲タコハイ駅」に
『京急蒲タコハイ駅』にNPO法人が「公共性を完全に無視」と抗議 サントリーは「真摯に受け止め対応」と装飾撤去を認めて駅広告を縮小
NEWSポストセブン
阿部慎之助・監督は原辰徳・前監督と何が違う?(右写真=時事通信フォト)
広岡達朗氏が巨人・阿部監督にエール「まだ1年坊主だが、原よりは数段いいよ」 正捕手復帰の小林誠司について「もっと上手に教えたらもっと結果が出る」
週刊ポスト