こうした差は日本の野球の長い歴史、特に高校野球で培われたものでしょう。日本人選手のきめ細やかな配慮はグラウンド外でも目立ちます。グラブの手入れも、練習前の入念なウォームアップも日本人は特別です。メジャーは大雑把な選手が多く、道具の手入れは担当者任せ、試合前練習も連戦で疲れていると一切やらない。僕が若手中心のパイレーツで受け入れられたのは、そういった入念な準備が彼らにとって驚きだったからだと思います。
 
 退団翌年に評論家としてパイレーツのキャンプを訪れると、僕がしていた準備運動は「KUWATAストレッチ」として練習メニューになっていました(笑い)。

 しかし日本の野球には弊害もあります。肘や肩の酷使です。ダルビッシュ有君や田中将大君の故障も、少年野球の頃から蓄積した投げ過ぎが一つの原因になっていると僕は見ています。

 あくまでも経験論ですが、高校時代に強豪校のエースだった投手は、プロ入り後約10年が危険な時期となるのでは。少年野球の段階から指導者が肘や肩に負担のないフォームを研究し、連盟は球数や連投を制限するルールを徹底するなど、関わる大人が考え方を根本的に変えない限り同じことが繰り返されるでしょう。

■くわた・ますみ/大阪府出身・47歳。PL学園から読売巨人軍に入団。2007年にピッツバーグ・パイレーツへ移籍。2008年に現役引退後、早大院卒。現在は野球解説者。

※週刊ポスト2015年5月29日号

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