NHK『きょうの料理』大野プロデューサー


大野:料理の作り方を伝えるだけならインターネットでいくらでも知ることができます。なのでぼくたちは、テレビをつけた方に、「おいしそうだな」、「楽しそうだな」、「ちょっと料理やってみたいな」、「食べてみたいな」と思ってもらうにはどうすればいいのかを常に考えています。たとえば平野レミさんの企画では、「料理って楽しいよね」ということを伝えようとしています。実際レミさんが楽しそうに料理を作っているから、見ているほうも釘づけになっちゃうんですよね。

 それってなかなか文字では伝わらない、テレビならではのところだと思います。だからレシピを伝えるだけではなく、手作り料理の楽しさを伝えたいと思っています。料理をすることで、暮らしが豊かになったり、人と人とのコミュニケーションができたりもする。「毎日料理を作るって面倒くさいな」と思っている忙しい方に、「手作り料理も意外と楽しいかも」と思ってもらえるように意識しています。

――人気のジャンルはありますか?

大野:世界遺産に登録されたことの影響も若干あるかもしれませんが、和食のニーズがすごく高まっています。昔ながらのおかずや、みそやゆずこしょうなど、和食の手仕事みたいなものを取り上げると、特に若い人たちからの反応がいいですね。いろいろなニーズがありますが、世代的に見ると中高年と若い層は、手間隙かけてしっかり作りたい人が多い。子育て真っただ中の30代40代からは、手早くおいしいものを作りたい人が多い。だから企画によって、見てくれる年齢層が顕著に分かれる傾向がありますね。

――番組への反応はどのように調べていますか?

大野:視聴者の声やテキストの読者アンケートからはもちろん、世代別の視聴率など、出てくるデータはすべて分析しています。そこにはインターネットのレシピサイトへのアクセス状況なども含まれます。「こういう企画はこういう人に今ニーズがあるんだ」といったことをできる限り把握するようにしていますね。

――収録はどのくらいのペースで行っていますか?

大野:放送は月曜から木曜まで週4回あるので、基本的には週2回、1日2本撮りしています。大阪では月に3本、年間に36本収録していて、あとは東京で年間148本収録しています。

――番組は収録ですけど、生番組のようなライブ感がありますね。

大野:編集をしないので、作り方は生番組と同じです。本番では24分30秒の映像を撮りますが、その前にまずリハーサルを一回やります。これは大体、時間がオーバーします。そこからデスクが中心になって、「何分オーバーしたから台本のこことここをカットして本番をすればぴったり収まるだろう」ということを詰めていきます。すると本番でバシッと決まるんですよ。ただし本番では想定外のことも起こりますから、料理が早く終わったり延びたりすることもあります。それでも編集をしないので、出演者含めスタッフがいかにぴったり収めるかということに集中しています。そこも見所のひとつとして注目してほしいですね。

――尺を調整するためにどのような工夫がされていますか?

大野:料理している人の周りにはフードコーディネーターのアシスタントの方たちがいて、どのタイミングで何を出し、何を下げるかということを細かく決めています。それをスムーズに行うためにはチームワークが大切で、あうんの呼吸で動けるようにガイドとして台本を用意しています。「ガス台で今こういうことをしているから、その間にこっちの調理台ではこういう準備ができるよね」といったことを話し合って、全体の段取りをあらかじめ決めておきます。ぼくが入局した時からいらっしゃるベテランの方の動きはまさにプロフェッショナル。カメラが手元を撮っている間に、横の物をサッとはけてくれます。助手は3人いるので、たまに誰かがカメラに映っちゃうこともありますけどね(笑い)。

――ノーカットならではの印象的なハプニングはありますか?

大野:おいしい匂いに誘われて、スタジオに虫が入ってくることがあります。特にお酢の匂いが好きらしく、そういう回はどこからともなく入ってきます。カメラに映ってはいけないので、お酢系の撮影の際は、リハーサルの時からドアを全部閉めてやっています。年に1回くらい、「虫待ち」みたいなことはありますね(笑い)。

――出演する先生を選ぶ際の基準のようなものはありますか?

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