大野:企画ごとに、先生の個性を見ながら選んでいます。料理の楽しさを伝える企画なら、楽しく料理をしてくれる先生。基本をきちんと学ぶ企画なら、基本的なことをわかりやすく教えてくれる先生。企画に合った先生を見つけるのは、それほど大変ではありません。番組の歴史があるぶんネットワークの蓄積がありますので、助かっています。
――アナウンサーの方のローテーションは決まっていますか?
大野:東京2人、大阪1人のアナウンサーで回していますが、それも企画次第です。企画に合っているかどうか、先生との相性はどうか、といった観点で選びます。10年ぐらいやっている後藤繁榮アナウンサーのようなベテランになると、先生ともあうんの呼吸ですよね。高橋さとみアナウンサーは、結婚して自分も仕事をしながら料理をしているので、主婦層の視聴者目線で伝えるのが得意です。
――大野さんにとって、これまでで一番思い出深いひと品は何ですか?
大野:外れがないので、全部おいしいんですよ。収録後は出来上がった料理をみんなでちょっとずつ分けて食べるんですけど、毎回唸っていますよ。だからひとつと言われても選ぶのは難しい。ただ、伝説はありますよね。ネットでも話題になりましたけど、毎月レギュラーで出ていただいている土井善晴さんに塩むすびを作ってもらったんですよ。手に塩をつけておむすびを作るだけなんですけど、それだけで15分! お米を研いで炊いて握るだけの話で普通は15分持ちませんよ。
でも土井さんはさすがで、手の洗い方からしっかり教えてくれました。手をきちんと洗うことで、これから愛情を込めて料理をするんだという気持ちを整えてから料理に臨む、と。土井さんの時間の使い方が神がかっているということが話題になって、『マツコ&有吉の怒り新党』(テレビ朝日系)でも取り上げてくれました。他にもいろいろ企画は用意していたのですが、土井さんが「15分やります」と言うのでやってもらいました。でも、ぼくらもまさか本当にそれで15分やるとは思いませんでしたね。
――心構え的なところは、普通はレシピに書かれていませんね。
大野:月一で出ていただいている「ばぁば」こと鈴木登紀子さんも、おせちを作る回で話題になりました。鈴木さんのお宅にお邪魔して収録をしましたが、試食のシーンで女性アナウンサーのお椀の取り方や箸の持ち方が悪いって叱りだしたんです。散々怒られたのを、そのまま放送しました。するとそれがものすごくウケて、その年の視聴率No.1になったんです。次の年に再放送したら、またすごいウケました(笑い)。お椀の取り方やお箸の使い方って、なかなか料理番組ではやりませんよね。ぼくも見ていて感心したものです。