芸能

栗原類が発達障害を告白 民放でこれまで同様に振る舞えるか

 タレント・栗原類がテレビで発達障害を告白したことが話題になっている。勇気ある行動にコラムニスト・オバタカズユキ氏が拍手を贈る。

 * * *
 NHKがまたひとつ、たいした仕事をやってのけた。5月25日放送の「あさイチ」(NHK総合)で組んだ「どうつきあえば?夫や子どもの発達障害」特集にタレントの栗原類を招き、彼が発達障害であることの告白の場とした件である。

 番組開始から20分ほど経った頃、キャスターの有働由美子アナが、〈実は今日のゲストの栗原類さんも、実は公表されていないんですけど、発達障害の当事者でいらっしゃる――〉と話を振った。それを受けて栗原類はこう語り始めた。

〈はい、僕がアメリカにいた8歳の時に、ADD、注意欠陥障害と診断されたんです。渡米したばかりで英語がわからないという言語的な問題だけでなく、行動的な面もちょっとおかしいと思った担任の先生が、親に「診察を受けてみるのはいかがですか」と言ってくれ、それでぼくは初めてADDと診断されたんです〉(※適宜、文章整理しています)

 緊張だろう。表情がいつも以上に硬い。でも、両の眼にはいい意味で力が入っている。ガチな覚悟が見て取れる。

 栗原類はこの番組内で、冷蔵庫のお茶の位置がいつもと違うだけで気持ち悪く感じるような拘りが今でもあること、感覚過敏でテレビの大きな音や人の大声が苦手であることなどを明かした。子供の頃に観た魚が主人公のアニメ映画で自分の障害と向き合えるようになったエピソード、自分のできることとできないことを親や主治医がちゃんと言ってくれたからこそ今の自分があるという思いも語った。

 彼に関しては、キャラを演じているというより天然に近い不思議君ぶりを感じていたので、カミングアウトに驚きはしなかった。でも、そのしっかりとした告白には凛々しさがあった。あの栗原類は確実にカッコよかった。

 番組内で一人の医師が〈3歳児検診で発達障害が疑われる率13%。10人に1人よりも多く、これはみんなで考えていかねばならない問題だ〉と言っていたが、世間の理解はまだまだ足りない。発達障害は千差万別で栗原類が抱える困難はその一例にすぎないとはいえ、彼の勇気ある行動はたくさんの障害者やその周囲の者の気持ちを強くさせたことだろう。

 私のツイッターのタイムラインでは、そう簡単に人を褒めたりしない精神科医が〈こういった告白をしてもらえると、患者さんや家族へ、説明しやすくなるのも確か。ありがとうございます〉とつぶやき、大勢がそれをリツイートしていた。番組はNHKオンデマンドでまだ視聴可能なはずだ。できることならNHKには公共の利益のために番組を再放送か無料配信してほしいが、関心のある向きには買って損のない優良コンテンツだと思う。

 私がもっとも感銘したのは、特集の終盤に栗原類がこう述べた部分である。
 
〈基本的にテレビで発達障害を取り上げる時は、天才型や著名人の名前を出したりするから、それを見て「ぼく発達障害?」とか、実際に障害のある人でも相談しにくいところがあると思うんです。やっぱり周りが理解してくれるような環境がもっと整ったらいいなとすごく思います〉

 そうそう、そうなのだ。ここ10年ほどの間に、発達障害に関する情報はずいぶん増えた。しかし、マスメディアがその題材を扱うと、栗原が指摘したような「脚色」をすぐにやってしまう。Aにはそんな障害があった、にもかかわず、こんなに成功したのである!というお決まりパターン。日常生活は滅茶苦茶だったが、驚異的な記憶力や集中力や映像思考力などなどで、彼は彼にしか為しえない偉業を果たしたのです!といった語りのスタイルだ。

 たしかにそう紹介できる成功者も存在する。でも、当然の話だが、発達障害があれば図抜けた他の能力がセットでついてくるわけではない。大半の障害の持ち主は人知れず地味にハンディキャップと格闘している。シリコンバレーでイノベーションをおこしたり、芸術やスポーツなどの才能で世界を感動させたりするのはごくごく一部の天才的発達障害者だけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

長女が誕生した大谷と真美子さん(アフロ)
《大谷翔平に長女が誕生》真美子さん「出産目前」に1人で訪れた場所 「ゆったり服」で大谷の白ポルシェに乗って
NEWSポストセブン
3月末でNHKを退社し、フリーとなった中川安奈アナ(インスタグラムより)
《“元カレ写真並べる”が注目》元NHK中川安奈アナ、“送別会なし”に「NHK冷たい」の声も それでもNHKの判断が「賢明」と言えるテレビ業界のリスク事情
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
第一子誕生の大谷翔平、広告出演オファー殺到でスポンサー収入200億円突破も ベビー関連・ファミリー関連企業から熱視線、争奪戦早くも開始か 
NEWSポストセブン
九谷焼の窯元「錦山窯」を訪ねられた佳子さま(2025年4月、石川県・小松市。撮影/JMPA)
佳子さまが被災地訪問で見せられた“紀子さま風スーツ”の着こなし 「襟なし×スカート」の淡色セットアップ 
NEWSポストセブン
第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
金メダル級の演技(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』で“韋駄天おのぶ”を演じる今田美桜の俊足秘話 「元陸上部で中学校の運動会ではリレーの選手に」、ヒロイン選考オーディションでは「走りのテスト」も
週刊ポスト
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
(撮影/田中麻以)
【高市早苗氏独占インタビュー】今だから明かせる自民党総裁選挙の裏側「ある派閥では決選投票で『男に入れろ』という指令が出ていたと聞いた」
週刊ポスト
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン