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【書評】放っておいても金が入ってくる仕掛けを作っているか

【書評】『普通の人がお金持ちに なりたくなったら』井口晃著/ワニブックス/1300円+税

【評者】森永卓郎(経済アナリスト)

 好きな事を、好きな時に、好きな人と、好きな場所で、好きなだけやる。そんなことは、サラリーマンにとっては、夢のまた夢だろう。それを実現するためには、お金が要る。そのお金を得るために必要な思考法を、貧乏人の発想・お金持ちの発想という対比で、分かりやすく示したのが本書だ。

 著者は、中高生時代にいじめで5回転校し、大学は2回も中退、そして就職にも失敗して、極貧生活を経験している。そんな著者が、いまやロサンゼルスのハリウッドヒルズで暮らす億万長者になった。

 本書は、成功に至る過程で体得したノウハウを記しているので、話が具体的で分かりやすい。私は、仕事上、億万長者と交流する機会がたくさんあったので、その経験から、ここに書かれていることは、的を射ていると思う。

 例えば、貧乏人は人を利用するだけ利用して自分の収入を増やそうとするが、金持ちは人間関係を増やし、深めるための出費や苦労をいとわないと著者は言う。これは、真実だ。だから、お金持ちは、例外なく腰が低い。偉そうにしているのは、努力しないでお金を手に入れたボンボンたちだけだ。

 著者が発見した思考法の事例が、本書にはズラリと並んでいて、一見すると意外なものもあるのだが、よく考えると納得できるものが多い。ただ、一つだけ気をつけておかなければならないのは、金持ちの思考法に切り替えるというのは、金持ちになるための第一歩で、必要条件でしかないということだ。

 本書では簡単に触れられているだけだが、金持ちになるための肝は、いつまでも労働者でいてはいけないということだ。金持ちは、放っておいても、お金が入ってくる仕掛けをきちんと作っているのだ。

 著者の本業は、コーチングだが、本書の巻末にはシークレットセミナーの無料視聴サイトのURLが付いている。これをみた読者が著者のコーチングを受ければ、著者のビジネスは確実に儲かる。そうした仕掛けを思い付くようでないと、いくら思考法を変えても、金持ちにはなれないだろう。

※週刊ポスト2015年6月12日号

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