24時間情報を浴び続け、かつ、〈どうせウソだよね〉と疑ってかかる思考習慣の原点は巻末の「『情報』個人史」にも詳しい。百科事典を愛読し、札幌西高時代は教師らと『TIME』や『LIFE』を題材に議論に興じたが、そうした成育歴と何事にも漫然とは対峙しない現在の氏の間に、特に因果関係はないという。
「要するに子供時代の話も含めて結果というか、元々地頭がいいんですよ(笑い)。なんて言うとまた思い切り叩かれるけど、例えば孫(正義)さんだって別に金儲けがしたいとかじゃなくて、何か面白いことがしたいだけ。たぶん柳井(正)さんとかビル(ゲイツ)も、生まれた時からああだと思う。
要は成育環境や教育より、生まれ持ったセンスだと事実を言ってしまうのも僕の性格で、予定調和は元々大嫌い。幼稚園の頃から問題児だった僕は59年間、無意味で面白くないことは一切やってこなかったんです」
45歳の時、「経費がどうとか、フツウの会社になった」マ社を辞めた。落語や歌舞伎の粋に影響を受けたという軽妙な語り口で面白いことを面白く話す成毛氏の場合、「いかに面白い現場に立てるか」が、最大の物差しだ。
「入り口は公知の情報なんです。最先端の理論物理学とか、面白そうな分野を雑誌や専門紙で見つけてきて、面白そうな人に会いに行き、その先がインテリジェンスになる。最近はピケティや超ひも理論の本が売れたり、難しい話に興味を持つ層も増えてきて、流れが変わってきている感じがします」
人と違う情報を意識的に摂取・排泄すると、みんなと違う面白い話ができる。しかし、それがなかなかの境地であることは言わずもがなだが。
【著者プロフィール】成毛眞(なるけ・まこと):1955年札幌生まれ。中央大学卒。アスキー等を経て、1986年日本マイクロソフト設立に参加し、1991年より社長、2000年に退社。書評サイト「HONZ」代表やスルガ銀行社外取締役、早大ビジネススクール客員教授等も務める。『本は10冊同時に読め!』『就活に「日経」はいらない』等話題作多数。2012年の『ノンフィクションはこれを読め!HONZが選んだ150冊』は現在毎年刊行。一年中ほぼアロハ姿。178cm、79kg、O型。
(構成/橋本紀子)
※週刊ポスト2015年6月12日号