だが、前出の安蔵氏は「市場は縮小しながらもCDは生き残る」と予測する。
「10代~20代の今のデジタルネイティブな若者たちにとって、音楽はデータさえ手に入ればよく、CDやUSB、SDカードといったメディア自体を有難がる人は少ないでしょう。
でも、30代以上のCD世代や特定アーティストの長年のファン心理としては、配信された楽曲ではモノが残らないため、パッケージされたメディアを持っておきたいという所有欲が根強くあります」
音楽評論家の富澤一誠氏も同様の意見だ。
「1億2700万人いる日本の人口のうち、10代、20代は2800万人足らずで、50代より上の世代が6000万人以上と圧倒的に多い。この世代は1960年代~80年代に青春時代を送った人たちで、目に見えない音楽を1曲200円程度で200曲ダウンロードして携帯プレーヤーに入れるよりも、CDを10枚買うほうが価値が高いと感じています。
だからこそ、往年の歌謡曲を寄せ集めたコンピレーションアルバムが売れているわけですし、アナログレコードが見直されたりしているのです。そう考えると、CDも完全に廃れてしまうことはないでしょう」
ただし、CDが今後も売れ続けるためには「絶対的な条件がある」と、富澤氏は指摘する。
「いま、ミリオンセラーを記録するアイドルやビジュアル系のCDは、ジャケットのデザインがすべて違うとか、ライブの優先応募券が入っているなど、“グッズ化”して成功しているだけです。もちろんレコードビジネスとしては評価しますが、ソースとなる楽曲自体が売れているわけではないのです。
やはり、CDを買ってまで繰り返し聴きたくなるような優れた楽曲や魅力的なアーティストが育ってこなければ、ますます大量消費される配信サービスの勢いに流されてしまうでしょう」
さて、ミスチルのUSBアルバムがレコード業界や他のアーティストにどんなインパクトを与えるのか。多様なメディアや視聴方法が乱立する現状だけに注目したい。