不幸感を算出した武蔵野大学講師の舞田敏彦さん
実際に、日本男性の既婚と未婚での不幸感の差は37.0ポイントと23か国のなかで極端に大きな数字だ。ちなみに、日本の女性既婚は5.3%、女性未婚は8.1%で、両者の差は2.8ポイントしかない。
「幸福と不幸は主観なので、『幸せ』と答えないと恥だと思うブラジルと日本を単純に比較できません。でも、既婚と未婚の差については客観的なデータといえます。これとは別に離婚と自殺の関係を調べたことがありますが、男性だけが離婚によって数値が高くなっていた。中年男性にとって、情緒安定機能を果たす集団が『家族』に偏っているのでしょう。パートナーを持つ形式の多様化や、子どもを持つチャンスの拡大など、家族の枠を広げれば状況は改善すると思うのですが、なかなか変わりませんね」(前出・舞田さん)
舞田さんが「専門外です」と言いながら中年男性のデータを算出するのは、政策をすすめるのに役立つデータになると考えているからだ。
「今回の中年男性未婚の不幸感は、第2次ベビーブーム世代を中心とした人口が多い世代の問題をあらわしていると思います。教育学の世界でも、子どもや老人などわかりやすい世代ばかりが対象にされがちですが、人口が多い世代の問題は社会問題につながります。中高年は支援の対象になりにくい存在ですが、エビデンスを積み重ねていくことで政策担当者が動くきっかけになってほしいですね」(前出・舞田さん)
第2次ベビーブーム世代が成長する過程で社会問題となった事象は多い。学生時代はいじめ、社会人になると引きこもりやニート、今は次のフェーズに突入しつつあるようだ。不幸感が話題になる少し前、お金がなくてモテないオッサンを男性弱者と呼び、その弱い男性が増えているのに見過ごされていると話題になった。可視化するのが難しい問題だが、中高年未婚男性の不幸感は見過ごせない問題だろう。