国際情報

失策責任追及された劉少奇 死亡時の体重は20キロ未満だった

 中国共産党の歴代指導者たちは常に失脚は暗殺に怯え、同誌や部下の粛清を繰り返してきた。その権力闘争の歴史のなかで空前絶後の「極悪人」は毛沢東だと指摘するのは評論家の宮崎正弘氏。そんな同氏が、1958年から行われた急進的な社会主義建設の試み「大躍進政策」の失敗により悲劇に見舞われた劉少奇の死に関する、現在の中国共産党の嘘について語る。

 * * *
 大躍進政策の大失策が明らかになると毛沢東は国家主席の座をナンバー2の劉少奇に譲る。
 
 ところが市場主義を導入して経済を立て直そうとした劉少奇や鄧小平ら改革派の権力が強まると、毛沢東は彼らに「走資派(中共内で資本主義の復活を目指す実権派)」のレッテルを貼り、反革命勢力打倒を掲げて「文化大革命」を発動する。毛沢東の腹心の林彪が国防部長として軍を掌握、毛の妻の江青ら悪名高き「四人組」(江青、王洪文、張春橋、姚文元)が恐怖政治を敢行した。

 毛沢東思想を狂信する少年少女は「紅衛兵」と称し、「造反有理(造反にこそ正しい理がある)」をスローガンに各地で反革命分子の吊し上げを行った。北京郊外の大興県では、乳幼児から老人まで325人を虐殺。文化大革命中、推定、数百万~1000万人以上の死者・行方不明者が生じた。

 狙われた劉少奇は1968年10月の党大会で「裏切り者」、「国民党反動派の手先」と糾弾され、党を除名される。自宅には紅衛兵が乗り込み、罵倒とリンチを延々と繰り返した。1969年10月に肺炎で非業の死を遂げたが、死亡時の体重は20kgに満たず、紅衛兵に殴り殺されたとの説もある。自らの地位を脅かす政敵を徹底して叩き潰すのも独裁者・毛沢東の流儀だった。

 ところが現在、中共は劉少奇が死去した河南省開封に「逝去跡記念館」を建て、劉少奇の危篤時に医師団が駆け付けて酸素ボンベで救命を図ったというお涙頂戴の物語を流布する。嘘に塗れた「正史」である。

※SAPIO2015年7月号

関連記事

トピックス

公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハリー・ポッター役を演じる稲垣吾郎
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』に出演、稲垣吾郎インタビュー「これまでの舞台とは景色が違いました」 
女性セブン
麻薬取締法違反容疑で家宅捜査を受けた米倉涼子
「8月が終わる…」米倉涼子が家宅捜索後に公式SNSで限定公開していたファンへの“ラストメッセージ”《FC会員が証言》
NEWSポストセブン
巨人を引退した長野久義、妻でテレビ朝日アナウンサーの下平さやか(左・時事通信フォト)
《結婚10年目に引退》巨人・長野久義、12歳年上妻のテレ朝・下平さやかアナが明かしていた夫への“不満” 「写真を断られて」
NEWSポストセブン
人気格闘技イベント「Breaking Down」に出場した格闘家のキム・ジェフン容疑者(35)が関税法違反などの疑いで逮捕、送検されていた(本人SNSより)
《3.5キロの“金メダル”密輸》全身タトゥーの巨漢…“元ヤクザ格闘家”キムジェフン容疑者の意外な素顔、犯行2か月前には〈娘のために一生懸命生きないと〉投稿も
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
バスツアーを完遂したイボニー・ブルー(インスタグラムより)
《新入生をターゲットに…》「60人くらいと寝た」金髪美人インフルエンサー(26)、イギリスの大学めぐるバスツアーの海外進出に意欲
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
ハワイ島の高級住宅開発を巡る訴訟で提訴された大谷翔平(時事通信フォト)
《テレビをつけたら大谷翔平》年間150億円…高騰し続ける大谷のCMスポンサー料、国内外で狙われる「真美子さんCM出演」の現実度
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン